柔道のバルセロナ五輪78キロ級金メダリスト吉田秀彦(32)が、8月28日に東京・国立競技場で開催されるプロ格闘技興行「Dynamite!」でプロデビューすることが、9日までに内定した。柔道の普及を最大の目標に置いて、グレイシー柔術のホイス・グレイシー(35)と、打撃なしの道着マッチで対戦。関係者によれば来週にもプロ参戦の会見が行われる。

 吉田のプロデビュー戦の相手が、同じ柔道の流れをくむグレイシー柔術のホイスに決まった。主催のPRIDE側は4月に吉田招へいを宣言。この日まで交渉を重ねた結果、PRIDEとK-1勢が対決する8・28国立競技場大会の特別試合として、デビューすることで合意した。同競技場で格闘技の大会が行われるのは初めて。日本格闘技界初の10万人興行が、吉田の初舞台として用意された。

 吉田はこの日も、東京・世田谷の吉田道場で道場生の指導に汗を流した。「大事な子供さんたちを預かる立場なので」と話し、参戦についても「(PRIDEからの)オファーが届いたばかりなので、まだ何とも言えません」と慎重に言葉を選んだ。吉田にとって、最優先は自らの道場の発展と柔道の普及。まずは子供たちや父母に説明しなければならない。「やるにしろ、やらないにしろ、はっきりした形で話します」と言うだけにとどめた。

 柔道の普及が大目標だけに、試合方式も顔面パンチなしの道着マッチになることが決定的だ。いきなり何でもありのバーリ・トゥード戦では、準備期間が短すぎる。それ以上に、柔道の普及というテーマからも外れる。グレイシー柔術の第一人者でもあるホイスとの試合なら、柔道をアピールする格好の機会になる。

 関係者によれば、契約金は1億円前後。4試合程度の出場契約を結んだとみられる。実績と知名度を考えれば、ファイトマネーも1試合1000万円以上が予想される。いきなり、総合格闘技界のトップ待遇となるが、吉田自身は「今は道場が最優先。いろいろ考えているが、今は話せない」と、言葉をにごした。

 吉田は来週にも会見を開いて、自らの口でプロデビューの経緯を説明するという。いずれにしても、柔道五輪金メダリストの総合格闘技参戦は史上初、世界王者の小川直也に匹敵する話題を呼ぶことは確実だ。ファイト内容次第では、桜庭との日本人トップ対決実現の可能性もある。吉田のプロ参戦が格闘技界の起爆剤になることは間違いない。

 この日の「Dynamite!」会見では、桜庭和志(32=高田道場)とミルコ・クロコップ(27=クロアチア)の対戦が正式に発表された。背広姿で会見に臨んだ桜庭は、いつも通りに余裕たっぷりの受け答え。試合の抱負を尋ねられると「昔、酔っぱらって子供の自転車に乗って帰ったら、通りかかった警官にドロボウ扱いされ、交番に連れていかれました。(警官の)ミルコに勝って、その時の無実を証明したい」と長々と真顔で話し、会場の笑いを誘った。

 最大の懸案となっているルール問題についての意見を聞かれると「右ハイキックで倒せればいいですけど…。できれば、打撃のないルールがいいかな」と笑わせた。左肩を負傷した昨年11月のシウバ戦以来の実戦が、いきなりプロレスハンターの強豪クロコップに決まっても「まだ特にプレッシャーは感じていません。新技も特にないです」と淡々と話していた。