プロ柔道家・吉田秀彦(40=吉田道場)が最重量ボディーで有終の美を飾る。今日25日、東京・日本武道館で行われる「吉田秀彦引退興行~ASTRA」で中村和裕(31)との同門対決に臨む。24日、都内で行われた前日計量で体重113キロをマーク。95・7キロの中村よりも17・3キロ重い肉体に仕上げた。徹底した筋力トレや約5年ぶりとなる本格的な柔道トレで体を鍛え上げての増量。筋肉のよろいを武器に一番弟子を倒す意気込みをみせた。

 吉田は過去18戦で最も重いウエートで仕上げてきた。会見前の計量では、服を着用のままで113キロ。中村の95・7キロよりも、17・3キロも多かった。思わず中村が「(体重差が)正直、20キロ近くもあると思っていなかった」と驚くほどの増量ぶり。吉田は「いっぱいおなかの中に詰め込んできたので、だいぶ増えました」と場内の笑いを誘い、その意図と本心を隠した。

 ハンディを埋めたかった。柔道時代、欧州主要大会ドイツ国際100キロ級で優勝した実績のある中村と柔道着で戦う。特にグラウンド勝負になれば柔道着が不利になることは間違いない。今までも小川直也、石井慧ら元柔道家や、柔道経験者で「寝技世界一」の称号を持つ菊田早苗との対戦では柔道着を脱いだ。今回も「寝技になれば不利」(吉田)と認める。しかし体重で20キロ近く重ければ体格差で上回ることが可能。吉田は「この体重を生かして頑張りたいと思う」と不敵に笑った。

 動きは軽くなった感覚がある。ここ1カ月は専門トレーナーを招き、週3回はウエートトレを敢行して肉体を強化。05年大みそかの小川戦以来、実に5年ぶりに本格的な柔道練習を母校・明大で取り組んだ。吉田は「こんなにきつかったのかと思う」と言うほど、大学生相手にけいこを積んで体をいじめ抜いた。興行主催者となるJ-ROCK國保尊弘社長(41)は「吉田本人は体が動くと言っている。ベルトの穴も2つほど細くなったと言っている」と代弁。筋肉量のアップで体重を増やしてきた。

 中村とは今年に入り、1度もスパーリングを一緒にやっていない。特に対戦決定後は練習場を変え、顔を合わせなかった。この日の写真撮影でも吉田は中村からのピリピリムードを感じ、目を合わせなかった。

 吉田は「なれ合いの試合をすると見ている人も面白くない。やるか、やられるかの勝負をしないといけない。終わった時にはすがすがしい気持ちで引退できるように頑張ります」と語る。

 引退試合で最重量ボディーを用意した吉田が、非情に徹して弟子に牙をむく覚悟を決めた。【藤中栄二】