[ 2014年7月7日9時45分

 紙面から ]PK戦で2本止めたオランダGKクルル<W杯:オランダ0(4PK3)0コスタリカ>◇準々決勝◇5日◇サルバドル

 夢のW杯初出場は、極限の緊張感の中で実現した。オランダGKティム・クルル(26=ニューカッスル)は「ベンチにいて、試合に出て、PKを止めて、GKにとって最高のシーンの主役に自分がなった…。何て言ったらいいんだ」と興奮した。

 延長後半ロスタイムに投入され、PK戦は相手の先攻で始まった。2人目ルイスの左下に来たキックをセーブ。止めれば決着の5人目も再び左に跳び、左手1本ではじき出した。キッカーに対して自分の目を指さし「お前を研究したぞ」とささやく。この幻惑法で「(11年に)チェルシーのランパードを止めたことがあるんだ」。奇策に奇策を重ねて勝つと、ベンチから正GKシレッセンが真っ先に駆け寄ってきた。

 05年に17歳で英1部ニューカッスルと契約し、同年のU-17W杯で主将として3位。A代表は11年の親善試合ブラジル戦で完封デビューした。チーム最長身の193センチでニューカッスルでは正選手。代表では足元の技術が劣るとして控えだが、セーブ能力だけなら負けなかった。

 「全員が優勝に必要な選手」と腐らず、国際Aマッチ出場6試合目で大役を全うした。そして付け加えた。「サッカー人生最高の日だ。やっぱり今日は夢だよ。信じられない」。

 ▼PK戦用GK

 W杯のPK戦は史上25試合目だが、負傷や退場による交代とは別に、延長終了間際にPK戦要員としてGKが交代出場したのは今回のオランダが初めて。先発のGKとPK戦でのGKが異なった例は過去に1度だけある。06年大会の準々決勝ドイツ-アルゼンチン戦で、アルゼンチンの先発GKアボンダンシエリが後半26分に負傷し、控えのレオ・フランコが交代出場した。試合は延長戦でも決着がつかずPK戦へ。アルゼンチンはフランコが4本すべて決められ敗れた。