25日に岩手県滝沢市で行われた握手会イベントで男に切りつけられ、頭や指にけがをしたAKB48メンバーの川栄李奈(19)入山杏奈(18)が26日、入院していた盛岡市内の病院を退院した。

 前代未聞となった握手会での悲劇も、1人の男性スタッフによる勇敢な行動が被害を最小限に食いとどめていた。この日、複数の関係者の話で分かった。

 仙台市在住のフリーターで、会場整理を務めた男性Aさん(20)だ。AKB48グループカスタマーセンター長、戸賀崎智信氏が、この日早朝更新した交流サイト「グーグルプラス」によると現場そばにいたAさんが川栄李奈と入山杏奈を守ろうと、犯人が振りかざした凶器を素手でつかんだ。

 梅田容疑者がそれを振り払い、2人とも手と頭などを負傷したが、関係者によると、Aさんが止めにかかったことで、周囲にいた別の警備員やスタッフが騒ぎに気づき、取り押さえることができたという。

 取材に応じたAKB48劇場支配人湯浅洋氏によると25日夜に2、3時間の手術をしたAさんは、両親と「ゆっくりします」とこの日午前中盛岡市内の病院を退院。湯浅氏は「身をていして防いでくれた彼がいてくれたおかげ。受け止めてくれたことは感動したことであるし、握手させていただき私たちからお礼を申し上げました」。ほかの関係者も「勇気あるバイトスタッフだった」と感謝した。

 Aさんはイベント制作会社「ニュース・プロモーション」(本社・仙台市)のバイトスタッフだった。同社は東北地方のコンサート制作やプロモートなどに携わる会社で、松田聖子らのライブも手がける。AKB48側とは毎月実施される被災地訪問にも関わっており信頼関係を築いていた。同社は日刊スポーツの取材に「弊社からお伝えすることはございません」とした。