【ベネチア29日=木下淳】日本人初となる2度目の金獅子賞獲得が見えた。北野武監督(61)の「アキレスと亀」(9月20日公開)がメーン会場サラ・グランデで公式上映され、エンドロール終了までスタンディングオベーションに包まれる好況に、北野監督は「上映後に静かになって、ジワジワと拍手が増えてくる感じが(97年に金獅子賞を獲得した)『HANA-BI』の時と似てる」と再現を期待できる満足感を口にした。

 一夜明けた地元の反応も好評。「皮肉を交えたユーモアが秀逸」と絶賛した「IL

 TEMPO」紙や「IL

 FOGLIO」紙が5点満点中4点、「CIAK」誌は観客採点は4・5点が複数あった。上映中も、ビートたけしが体を張って遊び心を表現した物語後半に笑いと拍手が同時に起こった。何度も頭をかいて照れた北野監督は「(映画祭代表の)マルコ・ミューラーから最近なかった『おめでとう』の言葉が聞けて良かったよ」と喜んだ。

 一方でハプニングもあった。上映開始直後に音が出ないトラブルが発生。場内が明るくなって中断し、6分後に再開したが、脳裏に悲劇がよぎる。02年の同映画祭では「Dolls」が上映90分後のクライマックス直前に音声が途絶えた。北野監督は「『またかよ』ってガックリきてイライラしたけど、今回は開始直後だったから白けなくて助かった」と胸をなでた。

 ベネチアの酸いも甘いも思い出した今年の映画祭で日本人初の2度目のグランプリを狙う。同時に海外展開もスタートし、ヒット作「座頭市」などと同じ35の国と地域で配給を目指す。