今年の日本アカデミー最優秀主演女優賞を受賞した木村多江(38)が映画「東京島」(来年公開、篠崎誠監督)に主演することが12日、分かった。無人島に漂着した主婦が東京に帰る強い意思でサバイバル生活を繰り広げる姿を描く。原作は人気作家の桐野夏生氏が08年に発表した同名小説で、谷崎潤一郎賞を受賞した話題作だ。

 木村が演じる清子は夫に従順な主婦だが、ヘビを捕まえるなどの食料確保から始まる無人島生活を通して、女性が持つ根本的な強さを開花させていく。無人島には清子と夫以外に若い男性16人が続々と漂着。唯一の女性だけに、夫の死後は生きるために若い男性と次々に結婚するたくましさも発揮していく。

 木村といえば、ホラードラマ「リング」の幽霊、貞子を好演。「日本一不幸が板についた女優」の異名を持つ。本作は両極端な女性像を演じる役どころだけに、演技力を買われて起用された。日本アカデミー賞を受賞した「ぐるりのこと。」以来の主演作となる。

 撮影地は荒涼とした絶壁や透明な海が広がる無国籍な雰囲気の風景を備えた沖永良部島と徳之島が選ばれた。撮影は11日に開始し、木村も40日に及ぶ撮影期間のほとんどを同地で過ごす予定。木村は「清子も自分も追い込まれると思うので、どんなものになるのかはなぞです。今まで演じたことがない役。体当たりで今回は『薄幸』の真逆を目指します」と宣言している。

 製作側は「米ドラマ『LOST』のような人間ドラマもありますが、極限状態に置かれた無人島生活で普通の主婦だった女性がどう生き抜いていくかを中心に描きたい」としている。清子の3番目の夫を福士誠治が、島の生活になじめず衰弱していく最初の夫を鶴見辰吾が演じる。