◆ソロモンの偽証 前篇・事件(日)

 直木賞作家宮部みゆき氏が、構想15年、執筆に9年かけたミステリーの映画化。単行本3巻の長編を大幅カットしたが、無理なく2部作に収まった。

 クリスマスの朝、中学校で男子学生(望月歩)の転落死体が発見された。自殺と断定されたが、不良少年の犯行を目撃したと告発状が届く。校内が大混乱する中、正義感の強い藤野涼子は校内裁判を提案する。

 候補者1万人のオーディションを勝ち抜いた生徒役の奮闘が、張り詰めた空気を作り出している。中でも、主人公の名前を芸名としてデビューした藤野の存在感は圧倒的。凜(りん)としたまなざし、長ぜりふの説得力に、ダイヤの原石の輝きを感じる。石井杏奈も言葉を話せない難役をこなし、望月も狂気あふれるキャラを巧みに演じた。

 ビクッとする展開が3、4度。特に締めはゾッとする。成島監督の手腕と、小日向文世、永作博美ら脇を固めるベテラン陣の芸達者ぶりが光る。

 ただ1つ、マスコミの描き方だけが安っぽい。警察発表で自殺としているのに、勝手に不良少年を犯人と決め、「(男子学生は)殺された」と断言するリポーターには閉口。そこにもリアリティーを求めてほしかった。【森本隆】

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