実写映画化だけで5作目となる。アニメ版(91年)で極めたディズニーが再び決定版に挑む注目作だ。

 魔女ののろいで野獣に変えられた王子の心を、村一番の美女が曲折の末にほぐしていく物語。「ハリー・ポッター」の愛らしい少女から実力派に成長したエマ・ワトソンと舞台でも活躍するダン・スティーブンスとふさわしい顔合わせだ。

 仏ジャン・コクトー監督版から70年。VFX(特殊効果)の進歩で超リアルな映像も可能なのだろうが、幕開けの小さな村は舞台のような手作り感で「おとぎ話の世界」に誘う。おびただしい生花の数や小山のような収穫物、時代考察にのっとった隙のない衣装のエキストラにはパレード5回分くらいの厚みがある。舞台やアニメで味わえない、実写ならではのスケール感にはこんな出し方もあるのだと息をのむ。

 王子の城では対照的にリアルな時計や燭台(しょくだい)が最新技術で生き物のように動き、話す。立体的なスペクタクル、ミュージカル・シーンも含め、村と城にはメリハリがある。

 初ミュージカルのエマ・ワトソンの歌声には驚く。ファルセット部分はマライア・キャリーかと思った。【相原斎】

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