二階堂ふみ(20)が映画「蜜のあわれ」(石井岳龍監督、来年公開)で、金魚に変身する少女を演じることが7日分かった。時に尾ひれをひらひらさせる金魚の姿で、大杉漣(63)演じる老作家「おじさま」とエロチックな会話を繰り返し、夜は体を密着して添い寝する妖艶な役どころだ。

 原作は「あにいもうと」などで知られる小説家で詩人の室生犀星が、晩年の1959年(昭34)に発表した「蜜のあはれ」。現実を超えた世界観が描かれていることから映像化が困難と言われてきた。二階堂は原作を高校時代に読み、映画化と主人公赤子を演じることを夢見てきた。

 「映画化するなら、絶対に赤子をやりたいと思ってました。私はあの時代の小説のフェチズム(性的倒錯)がすごく強調されているところがとても好き。ロリータコンプレックス的な要素や女性に対しての憧れであったりとか、いろいろなものが入り交じっていて」

 過去、猫とタヌキを演じた二階堂だが魚を演じるのは初めて。それでも、金魚をイメージし手探りで役作りを進め、今年4月に富山、石川県金沢市などで行われた撮影に臨んだ。「人間以外の役をやるのは3回目なんですが、意外と人間以外もいけるな、と思いました」と自信を深めている。

 二階堂は、昨年のモスクワ映画祭で最優秀作品賞を受賞した「私の男」で、義父と禁断の関係を結ぶ女性を演じるなど、若手の中でも大人の色気を出せる女優として定評がある。大杉との初共演、石井監督との初タッグで新境地を開くか注目される。同じく石井組初参加の大杉は、「石井監督は映画の人。繊細と大胆を行き来する演出は役者冥利(みょうり)の時間でした」と手応えを口にした。

 ◆「蜜のあわれ」 赤子(二階堂)は自分を「あたい」と呼び、丸い尻と愛くるしい顔の女の子だが、実はある時は真っ赤な金魚に変身する。人間には女にしか見えないが、野良猫には正体がばれてしまう。赤子は老作家(大杉)と際どい会話を交わしつつ、静かに暮らしているが、そんなある日、少々怪しげな老作家の“過去の女”が現れる。