インドネシアで活躍する日本人歌手がいる。インドネシア在住のシンガー・ソングライター加藤ひろあき(32)が20日、ベトナム・ホーチミンで日刊スポーツの取材に応じ、インドネシアで活動する意義を語った。

 東京外語大入学後、音楽活動を始めた加藤は06年、インドネシア留学中に死者3500人以上、負傷者2万人以上が出たジャワ島中部地震で被災した。被災地に救援物資などを届けるボランティア活動を通じて、「生きる」という意味を考えるようになった。「生きるということは当たり前のようだけど、すごく幸せなこと。被災したことも運命だと思い、インドネシアで音楽活動をすることを決意しました」。

 幼少期から両親の仕事で海外生活をしていたが、インドネシア語は東京外語大に入学してから学んだ。インドネシアでは歌手のほか、お笑いコンビCOWCOWのネタ「あたりまえ体操」を翻訳したり、テレビタレントとして活躍し、「JKT48の仲川遥香と同じぐらい有名な日本人」と言われている。徐々に知名度を上げ、最近ではインドネシアだけなく、近隣国での活動も増えている。

 今月18日にホーチミンで行われた日越文化交流イベント「TOUCH Summer2015」に出演した際には、来場者の“救世主”となった。ゲリラ豪雨で会場が浸水し、約1時間30分停電が続き、ライブが一時中断した。加藤は真っ暗のステージの上で、ベトナム人が大好きな「ドラえもんのうた」をアカペラで熱唱した。来場者もつられるように同曲を加藤と合唱し、会場が1つになった。「あの時、自分が出来ることは歌うこと。つらい時こそ、笑顔になることで気持ちが前を向く。あの時のお客さんの笑顔は最高でした」。音楽を通じて、加藤が日本と東南アジアをつなぐ。