お笑いタレント前田健さんが26日午前1時36分、虚血性心不全のため死去した。44歳だった。24日に栃木県内でテレビ番組のロケ収録に参加。同日夜に東京・新宿区内の飲食店で食事をした直後、路上で倒れ、心肺停止状態で救急搬送されたが、意識が戻ることはなかった。関係者によると、不整脈の持病があったという。芸能界からは、早過ぎる死を悲しむ声が数多く上がった。

 前田さんは24日、栃木県内でテレビ朝日系「金曜ロンドンハーツ」のロケ収録に参加した。ロンドンブーツ、有吉弘行らレギュラー陣に加え、IKKO、KABA.ちゃん、IVANらオネエタレントも共演した。

 同局によると、オネエタレントによる運動能力の競い合いを行ったという。午前9時から50メートル走、走り高跳び、昼休憩を挟んで、腕相撲、1人が50メートルを走るリレーの4種目を行った。前田さんは、走り高跳びが終わり、昼休憩に入ったところで体調不良を訴えた。自ら歩いて医務室に行き、待機していた医師とスポーツトレーナーに相談。収録可能と診断され、そのまま現場に戻った。その後は予定通り、腕相撲やリレーに参加し、収録は同日午後3時に終わった。

 マネジャーを同行させて都内の自宅に戻った後、食事に出掛けた。行きつけのイタリア料理店でパスタなどを食べ、午後7時すぎに店を出たが、近くの路上で嘔吐(おうと)してあおむけに倒れているところを通行人に発見された。救急隊員がAEDを使ったが、意識は戻らず、心肺停止状態のまま救急搬送した。その後、蘇生したが、意識は回復せず、入院した都内の病院の集中治療室(ICU)で治療を受けていた。

 関係者によると、前田さんには不整脈の持病があった。先月20日に「健康は大事、とわかっていながら健康のためにしていることは何一つない。不摂生への執着を捨てきれない」とツイッターに投稿していた。

 24日の番組ロケに参加した振付師真島茂樹は前田さんの様子について「元気に走り、跳んで暴れていました。具合が悪い感じはまったくなかった」という。テレビ朝日は「前田さんから持病の説明はなく、番組としても把握していなかった」としている。所属事務所は持病を把握していたが、事前に収録内容を確認し、負担は軽いと判断、出演を了承していた。昨年夏にも同じ企画に参加して、体調に問題はなかったという。テレビ朝日は今回も「本人の意向で収録に参加したと聞いている」としている。

 前田さんは、アイドル歌手松浦亜弥(29)のものまねなどで知られ、歌手としても活躍。映画やドラマにも出演するなど幅広く活動していた。

 ◆虚血性心不全 突然死の大半が「虚血性心疾患」といわれる。虚血とは臓器に血液が供給されなくなった状態をいい、冠状動脈の動脈硬化性変化による狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)などで突然に起きる。突然死亡するという状態を強調する場合に「虚血性心不全」の診断名がよく用いられるが「虚血性心疾患」と同じことである。

 ◆不整脈 脈が不規則となり、動悸(どうき)が激しくなったりする。不規則な生活習慣、精神的ストレス、アルコールの飲みすぎなどで起こりやすい。怖いのは急に意識をなくして失神するもので一時的に心臓が止まっている。心不全などを起こす場合もある。

 ◆前田健(まえだ・けん)本名同じ。1971年(昭46)6月14日、東京都生まれ。19歳で渡米、ニューヨークで4年ダンス留学。94年に帰国後、ものまね、1人コントなどで活躍。松浦亜弥のものまねでブレークした。05年シングル「恋のブチアゲ♂天国」で歌手デビュー。「anego」「ホタルノヒカリ」などのドラマや、「20世紀少年」「昴」などの映画に出演。特技は英会話、ダンス。