移転問題で揺れる東京・築地市場を1年4カ月かけて密着取材したドキュメンタリー映画「TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)」(遠藤尚太郎監督)が1日、市場に近い映画館「東劇」で先行公開された。

 舞台あいさつでは、劇中に登場した仲卸業者2人や和食料理人、料理評論家ら5人が登壇。構想4年を経て初日を迎えた遠藤監督は「単なる市場の記録ではなく、そこで働く人たちが日々、世界に類のない市場を生み出していることを感じていただきたい」と話した。

 築地に隣接する銀座の日本料理店「銀座小十」の料理人、奥田透氏は「築地と銀座は1つのエリア。築地がないと銀座での商売は成り立たない。生のお魚をキチンと料理してお出しするすし屋さんがたくさんあるのは、築地に近いからだと思います」と解説。料理評論家の山本益博氏は「ということは、市場は豊洲に行かない方がいいですね」と続け、笑いを誘った。

 移転先の豊洲市場(東京都江東区)で土壌汚染対策の盛り土が行われていなかった問題が連日報道されていることを受け、遠藤監督は「今、市場の歴史は大きく変わろうとしている。僕らに求められていることは、日本の食文化をどのようにして育んで、次の世代に伝えていくか。それを考えるタイミングではないか」と訴えた。

 映画は15日から全国ロードショー。韓国、台湾、香港、タイ、シンガポールでも上映中、もしくは公開が決まっている。これまで4つの海外映画祭に招待され、今後も米ハワイ、台湾、レバノンの映画祭に参加する予定。約80年の歴史を終えようとしている築地市場は、世界中から注目されている。