本の出る半年ほど前にテーマが決まり、連載もそれに向けて書き進められていく。

 「だいたい、そのくらいの雰囲気のものでタイトルを決めてやっていきたいっていうのは、ありますね。だけど運命っていうか、運がよければ形が合うけれど、無い場合はそういきませんからね。それと、週刊誌としてはね、こんな風に7弾目までずっと10万以上刷って売れるっていう本はなかったんで、彼らもやっぱり米櫃(こめびつ)にしたいから一生懸命やるんじゃないですか(笑い)」

 ものを書くとき、読者のと対象を絞り込んで書いていく。

 「皆に読んでもらおうというような発想でものを書いていくと、これはやっぱり売れないんだね。売れないっていうか受け入れてもらえないんだね。今回だと別れを経験した人。別離、死別でもいいね。そういう事を経験した人に対して、あなただけが悲しいわけではないっていうことをね、伝えるためには、そこをやっぱり絞っていかなきゃ駄目なんだよね。じゃあ絞った結果が(数字が)落ちるのかっていうとそうじゃない。実は、別離とか死別とか別れっていう事を経験した人は10人のうち9人いるという、まあ私の発想なんだけども。形は違えども、切ない事はみんな経験してると。だから、多分このタイトルは受け入れられたんだろうと思いますね。私もはじめ、どうなんだろうって思ったんだけども。あの、結論ではないんだけども、苦しい事、切ない事、辛い事という事を経験すれば、その後に来るものは、必ず、そこで経験したものが力になっているっていう事はどうやら間違いじゃなさそうだ、と。だから、悲しみのどん底とか絶望のふちで、死を選ぶ人とかそういう人もいるだろうけども、人は生きていかなきゃいけないから、どんなに切なくてどんなに苦しくても、やっぱり歩き出しているっていうね。その何か、確証みたいなものはね、欲しいんだろうねえ。だから、その、別れた後にやはり切ない時間ってやっぱり、個人差はあるけども、ぱっと切りかえて、今泣いたカラスが…ってわけにはいかない。特に人との別れっていうのはね。だからそういう意味では、多分、私にもあったあのつらさっていうのをちゃんと言ってくれているって。ああ、私はこうしたけども、ああ伊集院さんはこういう風な、伊集院さんの友達の場合はこうだったのね、とかね。そういう事を書いてあげた方が実はいい。自分は本当に不幸だなとか、そういう事を思い始めたら抜け出せないんだね。で、意外とその抜け出せない人が多い」

(続く)