<復刻版:00年10月25日付の日刊スポーツ>

 演劇、映画界のベテラン山田五十鈴(83)が女優として初めて文化勲章を受章することが決まった。政府は24日、今年度の文化勲章受章者と文化功労者を発表した。文化勲章には山田、ノーベル化学賞の白川英樹氏(64)ら6人、文化功労者には小説の田辺聖子さん(72)文楽の吉田玉男(81)ら16人が選ばれた。

 70年に及ぶ芸能生活、常に第一線で活躍してきた山田五十鈴は、受章の感想を「思いがけなく、過分のものをいただくことになり、戸惑っております。ひたむきに、ひたすらに、芸に取り組んでまいりました」と、歩んできた道のりを振り返るように語った。文化勲章は女優としては初めて、歌舞伎以外の舞台俳優としては森繁久弥(87)に次ぎ2人目となる。

 1930年(昭5)に映画でデビューして芸能界入り「祇園の姉妹」などで名演技を見せた。中年からは主として舞台を仕事のメーンに据え「香華」「女坂」などでファンの心をとらえ続けた。87年、商業演劇の俳優としては珍しく自らの当たり役を集めた「五十鈴十種」を制定した。

 今年初めに東宝専属から離れ「もうなんでも好きなことをおやりなさい、ということでしょう。やりたいことはたくさんあるの」と、息子のような市村正親(51)と朗読のジョイント公演をするなど、若々しいところを示した。ライフワークの「たぬき」も、主人公の立花家橘之助の「芸に遊ぶ」心境に近づくのを目標にまだまだ続ける気構えだ。

 最後に山田は「これからも、今まで通りの自然体で、努めていきたいと思っております。父も娘も俳優でしたから、泉下で喜んでくれているものと思います」と、受章をさらなる芸向上の励みとしてまい進することを誓った。