俳優オダギリジョー(32)がシンガー・ソングライター井上陽水(59)のプロモーションビデオ(PV)に出演することが8日、分かった。陽水の代表曲の1つ「傘がない」(72年)のPVを新たに撮り下ろし、オダジョーが若き日の陽水を演じる。オダギリが音楽のPVに出演するのは初めて。陽水本人が見守る中、路上でギターをかき鳴らしながら歌うシーンを撮影した。

 撮影が行われたのは、横浜・JR桜木町駅前。行き交う人々の中、オダギリが陽水の愛用ギターを弾きながら「傘がない」を歌う。そこへタクシーに乗った陽水が通りかかり、車内から若いころの自分を見つめる設定だ。完成版ではオダギリが歌う姿に陽水の声を重ねる。カメラは1台だけ。長回しの一発勝負の緊張感の中、オダギリはフルバージョンを歌い、若き日の陽水を演じきった。

 出演は偶然からだった。昨年公開の主演映画「東京タワー

 オカンとボクと、時々、オトン」のパンフレットで、陽水の「人生が二度あれば」の詞について触れた。それを覚えていた陽水のスタッフが、PV構想段階でオダギリ側に無理を承知で打診。陽水の楽曲に親しむオダギリが快諾したことから、日本を代表するミュージシャンと俳優のタッグが実現した。

 オダギリは映画を中心に国内外で活躍する一方、音楽活動も行っている。撮影同様、路上で歌った経験があることを明かした。「飲みに行く時はギターを持っていって、飲んだ後に隅の方に座って歌っていたこともありましたね。(陽水の)『東へ西へ』を歌ったこともあります」と懐かしそうに振り返る。

 撮影前には何度も陽水のDVDを見て研究を重ねたという。「独特の歌い方だからまねできないし、まねしない方がいいと思って。(陽水を)意識するのをやめました」。撮影はオダギリ流で臨んだ。

 陽水はCMや映画「東京タワー」でオダギリを見て、「すてきな俳優。才能がある人」と思っていたという。歌うオダギリを眺めながら「ハンサムだよね。想像していたよりもいいなぁ」と満足そうな表情。撮影後、オダギリと並んでモニターをチェックしたが、「いいね!」とオダギリの背中をポンとたたいた。

 「すごくうれしかったのは、陽水さんが『ライブアクトやってるでしょ』とおっしゃったこと。本物のミュージシャンにギターの弾き方を認めてもらえてうれしかった」。オダギリにとって日本を代表するミュージシャンの一言は、何よりもうれしい褒め言葉だったようだ。