村下孝蔵さんの「初恋」は歌詞通りだった
「初恋」のヒットから25年。シンガー・ソングライター村下孝蔵さん(享年46)の人生をたどるドキュメント本「村下孝蔵STORY 深き夢歌、淡き恋歌」(落合昇平著)が15日、ソニー・マガジンズから出版された。村下さんは99年6月24日に高血圧性脳内出血のため亡くなった。早すぎる死を悼む声は多かったが、その人生が詳しく紹介されることはなかった。同書は村下さんの家族や27歳でデビュー後も、音楽活動の拠点にした広島時代のゆかりの人らを取材。少年時代と音楽活動を本格化していく様子を、絡めるように生涯を描いている。
♪好きだよと言えずに初恋は ふりこ細工の心 放課後の校庭を走る君がいた 遠くで僕はいつでも君を探してた…。
青春の甘酸っぱさがよみがえる歌詞が支持された「初恋」の原風景も、2歳上の姉絹代さんから語られている。少年時代を熊本・水俣市で過ごした村下さんは、水俣第一中の進学クラスにいた。「姉ちゃん、かわいか子、おったよ」と打ち明けたのはテニス部員で、教室の窓際の席から、校庭を走る彼女をみつめていたという。告白を勧める姉に「言えるくらいならこんなに悩まんよ」。しばらくして“初恋の人”は転校。♪浅い夢だから胸を離れない…歌詞の通りの恋だった。
「初恋」は今も若いミュージシャンがカバーし、今春、同曲を特集したテレビ番組の放送中に音楽配信のダウンロードが5000件を超えるなど、世代を超えて歌い継がれている。27歳のデビュー、地方を拠点、テレビ露出の少なさ、46歳の死…。村下さんは自然に「神秘の歌人」へと導かれていったが、同書に登場する人々はすべて、彼の温かく、ひょうひょうとした人柄を語っている。村下さんの歌声からにじむ、懐かしさをたどるように…。
[2008年7月16日8時3分 紙面から]
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