気迫と武骨が5日に急死した俳優緒形拳(おがた・けん、本名・緒形明伸=あきのぶ)さん(享年71)の代名詞だった。8月放送のNHKドラマ「帽子」では、帽子職人を演じた。はさみやミシンの動かし方、歩き方などどんな動作にも悩み、黒崎博ディレクターは「1カットごとの気迫がすごく、まるで新人俳優のようでした」と振り返る。60年の映画デビュー作「遠い一つの道」では、ボクサー役。当時からギラギラした瞳が印象的だった。
カンヌ映画祭グランプリの「楢山節考」で共演した坂本スミ子は「本番ではガラッと変わって厳しい目になる。我慢強く武骨で、人の話はよく聞くけど、自分の意志は曲げない。原石のような魅力を持った人だった」と語る。
武骨さは、俳優人生の原点である新国劇で培われた。辰巳柳太郎さんの「王将」にあこがれ弟子入りを許されたが、大河ドラマで人気を博した後、師匠を裏切る形で劇団を飛び出した。その後、独自に「王将」を演じたこともあったが、辰巳さんのためだった。「お客がいなくたって、先生が見てくれればいい。死んじゃったら、もうやらない」と、89年の辰巳さんの死去後は2度と演じることはなかった。
常に全力で肉体全部を使って取り組んできた。若い世代にも熱心に芝居の話をし、大きな影響を与えてきた。素顔は書を愛し、穏やかだった。芝居への意気込みのすさまじさは、そんなところからも分かる。




