10日に亡くなった俳優森繁久弥さん(享年96)の葬儀・告別式が20日、東京・青山葬儀所で行われ、小泉純一郎元首相、小林桂樹、黒柳徹子ら約1000人が参列した。その後のファンとのお別れの会には500人のファンが訪れた。

 祭壇にはほほ笑む遺影、天皇陛下からの「祭粢(さいし)料」や文化勲章が飾られた。レッドカーペットが敷かれた式場に森繁さんの歌声が流れ、法名「慈願院釈浄海」の字は孫が書いた。弔辞で松岡功東宝名誉会長が「大きなすそ野を限りなく広げた最高峰の人間として愛される希代の名優だった」としのび、喪主の次男建(たつる)さんは「会場で父の遺影を見て、涙が止まりませんでした。祭粢料という身に余るご厚情をいただき、無上の喜びを持って旅立つことができたと思います」。

 親族の席に米サンフランシスコから来日した養女のクラーク桂子さん(62)がいた。父は黒人兵士で、母は出産後に行方不明になった桂子さんは、ラジオ番組への投書をきっかけに森繁さんと知り合った。桂子さんは米国人青年と結婚を決めたが、出生届が未提出だったためビザもパスポートも出ず、森繁さんは彼女を養女にして送り出した。

 「3人の子どもと4人の孫がいます。お父さんのおかげで、今の幸せがあると思います」。森繁さんの妻万寿子さんの命日には必ず来日して墓参りをしていた。「お母さんが元気だった時は、年1回米国に遊びに来て、子どもたちも楽しみにしていました。お父さんは厳しく、そして優しかった。今日は『お父さん、ありがとう』と言いました」と涙をふいた。

 [2009年11月21日8時13分

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