歌手松任谷由実(56)が4日、横綱朝青龍の引退に触れ「横綱はいつかは引退する時がある」とねぎらった。この日、新潟・苗場プリンスホテルで行う冬恒例公演「SURF&SNOW」が開幕。今年で30年目に突入したが「あと30年はやろうと思う。音楽活動からの引退は考えていません」。横綱が相撲人生にピリオドを打った日に、ポップス界の女王は生涯現役を改めて宣言した。

 ライブ会場の苗場プリンスホテル一帯は今冬一番の寒さに見舞われた。外の厳しい寒さとは対照的な熱いライブを繰り広げる直前。ユーミンは朝青龍との思い出を静かに切り出した。

 「バッシングされてから好きになった」というユーミンが朝青龍と初めて対面したのは昨夏。新聞社が企画した対談だった。場所中の朝青龍と公演中のユーミンが名古屋の飲食店で合流。ユーミンは芋焼酎を、朝青龍はビールをオーダーしたという。アルコールで初対面の緊張感が解けたころ、ユーミンが引退後の人生についての質問を何度か投げかけた。

 「いつか横綱は引退する時がある。その後の人生を聞きたかったんです。にこやかでしたけど『あんた、引退、引退ってよう言うね』って。引退に触れられたくない感じがしました。あの時点では勝負する、という気持ちをお持ちだったと思います」。

 ユーミンが「スポーツは引退が必ずあるよね」と聞くと、朝青龍は「体がボロボロになってね」とだけ答えている。対談から半年後。これほど早く、土俵外の騒動で引退するとは、当時の2人は想定できない事態だった。

 朝青龍の印象は「チャーミングな人だなと思いました。憎めない感じでね」。今後については「辞められてもすでに成績をたくさん残しているし、モンゴルに帰っても豊かな人生があるでしょう」と推測した。

 今年で30歳を迎える朝青龍に対し、ユーミンの苗場ライブは今年で30年目に突入。会場だったレストランの取り壊しで継続の危機に直面するなど、平たんな道のりではなかった。「遊びでできたらいいな、という形で始まりましたけど、これだけ長く続くとは想像がつきませんでした。あと30年はやろうと思います」。

 ユーミンも一部で引退を報じられた経験がある。「十数年前にマヤ暦にはまっていたころ、2010年に引退って書いてもらったことがありましたね。活動の形態は少しずつ変わっていくと思うけど、引退は考えていません」。ポップス界の女王は、改めて歌い続けることを宣言した。

 [2010年2月5日9時3分

 紙面から]ソーシャルブックマーク