コメディー「てなもんや三度笠」や時代劇「必殺」シリーズ、ドラマ「はぐれ刑事純情派」などテレビで親しまれた俳優藤田(ふじた)まことさん(本名・原田真=はらだ・まこと)が17日午前7時25分、大動脈からの出血のため、大阪府吹田市の大阪大病院で死去した。76歳。ある時は底抜けに明るいコメディアン、またあるときは人生の深みを渋く刻む名優として、半世紀にわたってテレビの第一線で活躍した。「葬儀は身内だけで」とする故人の遺志もあり18日夜、大阪府内で営まれた通夜には近親者ら約40人が参列。19日に葬儀・告別式が行われる。喪主は長男原田知樹(はらだ・ともき)氏。

 所属事務所によると、藤田さんは16日夜、自宅で孫たちと夕食を食べた後に突然、吐血した。すぐに病院に運ばれたが、すでに意識はなかったという。家族の呼びかけにも、かすかな反応を示すだけ。意識を取り戻すこともなく、翌17日朝に亡くなった。

 08年に食道がんが見つかり、昨年は閉塞(へいそく)性肺疾患を患うなど、最近は病との闘いの連続だった。だが、仕事への情熱は失っておらず、次の「必殺」シリーズへの出演にも前向きだった。所属事務所は「仕事の打ち合わせで1月26日に大阪で会ったのが最後になった。『2月は寒いから、リハビリに励む。春からは仕事に頑張るぞ』と元気でした」と話す。まさに急変だったようで、楽しみにしていた「必殺」の新しい企画書が藤田さんの自宅に届いたのは、亡くなった直後の17日だった。復活を目指す藤田さんにはドラマやCM出演の依頼が多数寄せられていた。

 最後の仕事となったのは1月15日、CS放送「必殺」シリーズのナレーションどり。このとき立ち会った「必殺仕事人2009」(昨年1~6月、テレビ朝日系で放送)の森山浩一プロデューサーは「顔色も良く、本当に元気そうでした。また『必殺』に出たいという意欲を強く持っておられたので、まさか、こんなことになるとは…」と驚くばかりだった。

 芸能界の仲間や後輩によって後日、お別れの会が開催される可能性はあるが、18日の通夜はタレント大村崑(78)ほか、近親者ら40人ほどが参列したのみ。長きにわたって愛された必殺仕事人は静かに旅立った。

 [2010年2月19日8時42分

 紙面から]ソーシャルブックマーク