世界の北野武監督(66)が、米プロゴルファーのトム・ワトソン(64)と初共演した。このほど、米カリフォルニア州のペブルビーチゴルフリンクスで行われたBS朝日特別番組「トム・ワトソン×北野武

 奥深きゴルフ

 ~世界で戦うための戦略」(29日午後7時放送)の収録に参加。1982年全米オープンでワトソンが優勝を飾った名門コースで、北野監督は特製クラブ「飛ぶワトソン」をプレゼントし、お返しに数々の金言をゲットした。

 ラウンド前日、北野監督とワトソンの対面が実現した。北野監督の緊張ぶりは周囲にも分かるほどで、「下手くそだけど、怒らないでください」とあいさつ。対してワトソンは笑顔で「大丈夫。僕が直してあげるから」と返し、2人は「トムさん」「タケシ」と呼び合うようになった。

 同番組は食品メーカー「ネスレ」の100周年を記念した特別番組。国際的に高い評価を得ている北野監督と、かつて世界一に君臨したワトソンが、「世界でトップになる」という番組のコンセプトに一致していることから共演が実現した。ベストスコアは70台というゴルフ上級者の北野監督だが、数カ月前にオファーを受けてからは「ワトソンさんに失礼があっちゃいけない」と、ゴルフ漬けで待望のこの日を迎えた。

 翌朝の練習場、「ドライバーショットが右に出る」と悩む北野監督のスイングを見ると、ワトソンはすぐさまグリップを修正。たちまち、ドローの軌道の描くナイスショットになり、北野監督は魔法がかかったかのような表情でワトソンを見つめた。しかし、これで終わらないのが世界のキタノ。「トムさん

 飛ぶクラブがあるんだけど使ってみる?

 飛ぶワトソン」と言い、ワトソン仕様に調整したドライバーを手渡した。日本語のジョークが通じたかは不明だが、ワトソンは「これはいい顔をしている」と言い、300ヤードショットを披露。北野監督をあ然とさせた。

 ラウンド中は、ワトソンの金言が連発した。

 「ゴルフをやる上で大切なことは3つある。まずボールのライ(位置、状態)を見る。次に距離。ハザード(危険区域)を超えるために何ヤード必要かのチェック。そして風のジャッジ」

 レッスン生になりきった北野監督は、ワトソンの教えのままプレーを続け、難関18番パー5では見事3オンに成功。子供のように喜び、ワトソンも笑顔で祝福した。その後の対談ではワトソンが、このコースで行われた82年、全米オープン最終日17番パー3での奇跡のショットを述懐。対談を終えると、北野監督は「まだまだ聞きたいことがあった」と、ワトソンとの別れを名残惜しそうにしていた。

 ◆トム・ワトソン

 1949年9月4日、米ミズーリ州生まれ。スタンフォード大在学中の68年に米ツアーデビューし、卒業後の71年にプロ転向。74年に初優勝し、77年から80年まで4年連続賞金王。77年のマスターズなどメジャー通算8勝。59歳だった09年全英オープンでも優勝争い、プレーオフの末に2位。米ツアー通算39勝。00年からはシニアツアーにも参戦し、全英シニア3勝。178センチ。

 ◆ペブルビーチゴルフリンクス

 カリフォルニア州モンテレー半島に1919年に開場。太平洋に臨む自然を生かしたコースで、全米オープンの舞台としても5度使用され、数々の名勝負が誕生。景観の美しさなどからゴルファーが憧れる名門コースとしても知られ、かつてワトソンも「余命1日で最後のゴルフをするのなら、ペブルビーチを選ぶ」と答えている。ワトソンは82年にジャック・ニクラウスと首位タイで迎えた17番ホールで、グリーン左の深いラフからチップインバーディーを決め、全米オープン初優勝を決めた。