ソチ五輪に出場しているフィギュアスケート男子の羽生結弦(19)の心の支えは、「さっしー」だった。13日、親交を持つシンガー・ソングライター指田郁也(さしだ・ふみや=27)が、都内で取材に応じて、羽生から「さっしー」と呼ばれ、ソチから「(五輪を)楽しむよ」とメールが届いたことなどを明かした。自身は、五輪に挑む羽生をイメージして書き下ろした新曲「documentary.」を制作。今日14日から配信開始される。

 指田が羽生と出会ったのは2012年9月だった。羽生が、指田の楽曲「花になれ」を気に入り、アイスショー「ファンタジー・オン・アイス2012

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 fukui」で初共演が実現。指田がピアノで弾き語りし、羽生がパフォーマンスする。リハーサルから意気投合した。「彼も僕も人見知りですが、通じ合うものがありました。同じ表現者だし、彼はゲーム好きで僕は鉄道好き。マニア心を持っているところも共通してますね」。

 互いに多忙でメールや電話のやりとりが主だが、交流は深い。「結弦(ゆづる)」「さっしー」と呼び合い、指田は羽生を「彼は寡黙な人の印象があるみたいですけど、全然そんなことはなくて、19歳の青年らしく若々しい感じですよ」と評し、音楽好きで「小田和正さんのライブに行ってみたい」などと話していることも明かした。

 相談もし合い、羽生から「どうしたら自分に勝てるのか」と聞かれたことがあったという。「僕自身は『ライブを楽しむようにしているよ』と答えました」。羽生もその言葉に影響されてか、ソチから「(五輪を)楽しむよ」とメールが届いたという。現実に羽生は、取材にも「緊張も含めて楽しみたい」と答えており、その心構えで団体のSPではパーフェクトな演技を見せ、この日の個人SPにも臨んだ。

 羽生の「熱さ」を示すエピソードを披露した。羽生が、指田の仙台公演を観賞した際のことで「メッチャ泣いてました。メチャクチャ褒めてくれて、終わった後もいろいろ話をしたのですが、それ以外にもライブの感想を言ってくれる熱いメールが届きました」。

 新曲「documentary.」は、羽生からインスピレーションを受けて書き下ろした。先週末、完成版をデータでソチの羽生に送ったところ、「ありがとう。感動した」と返信があったという。「彼の頑張っている姿に背中を押してもらっているものもありましたし、彼にも『ずっとこういう曲を作るよ』と約束していました。心のよりどころみたいなものになったら」。歌でエールを送り、親友が五輪を楽しむ姿を日本からそっと見守っている。【近藤由美子】

 ◆指田郁也(さしだ・ふみや)1986年(昭61)8月18日、東京都生まれ。10年ワーナー主催「100年ヴォーカリストを探せ」で約1万人の応募者からグランプリを獲得。11年、「bird/夕焼け高速道路」でCDデビュー。3枚目のシングル「バラッド」は、13年放送の橋田寿賀子氏脚本TBS系連続ドラマ「なるようになるさ。」の主題歌。6月21日に東京国際フォーラムでの全国ツアー追加公演。血液型AB。