「めげない心が身につきました」。女優文音(あやね=26)。両親は長渕剛(58)志穂美悦子(59)。20歳でデビューしたが、その後、表舞台から消えた。一念発起して米国に留学。帰国後、放送中のTBS系ドラマ「SAKURA」で活動を再開した。留学時の苦労を振り返り、夢も語った。

 「SAKURA」(月曜午後8時)では、仲間由紀恵(35)ふんする潜入捜査官の妹を演じている。「ピンチになると助けにいく。『水戸黄門』でいえば、風車の弥七みたいな感じです」。殺陣の場面ではキレのあるアクションを披露している。アクション女優として一時代を築いた母親譲りの才能を発揮している。

 芸名「長渕文音」で08年の主演映画「三本木農業高校、馬術部」で女優デビューした。20歳だった。注目の2世女優として話題を集め、日本アカデミー賞新人俳優賞も獲得。順風満帆の船出だったが、大学卒業を機に米国留学を決意した。芸能界の表舞台から突然消えた。「後になって後悔したくなかった。今しかできないと思って。芝居の基本は演劇と思い、一から学びたかった」。

 12年7月に渡米した。行く先はニューヨーク。生まれて初めての1人暮らし。演劇学校に通い、「メソッド演技法」を学んだ。40年代に確立した演技法、演技理論で、自己の内面を深く掘り下げる。「日常会話はできたけど、学校は専門用語も出る。難解でイントネーションも違う。すごく苦労しました。でもそういうところでやっていかないといけないんです」。望んだ道だったが、付いていくのが精いっぱいの毎日。正月はホームシックになった。日本にいた時は家族で過ごし、もちつきもした。「米国は1月2日から仕事が始まる。正月ムードはあっという間。家族で過ごした時間が懐かしく、帰りたいと思いました」。1年9カ月の留学を終え、今年4月末に帰国した。「不自由や孤独もありましたが、とにかく精神力が付いた。何にもめげない心というか」。

 芸名から「長渕」を取った。「環境の変化をつけようと思った時、そうしようと思いました」。続けて言う。「皆さんが『長渕』と聞いて思い出すのが『剛』じゃないですか。自分の気持ちをフレッシュにする意味もありました」。親離れではなく気分転換だった。

 憧れているのは、米女優リブ・タイラー(37)。映画「アルマゲドン」で一躍ブレークした人気女優で、父親はロックバンド「エアロスミス」のボーカル、スティーブン・タイラー(66)だ。「ハリウッド女優と比べるなといわれるかもしれないけど、境遇が似ていて、人間的にも尊敬している。親近感が勝手に湧いているんです」。【松本久】

 ◆文音(あやね)1988年(昭63)3月17日、東京都生まれ。長渕剛、志穂美悦子夫妻の長女。4歳から10年間、バレエ学校に在籍。ドラマは11年TBS系「99年の愛」や11年のWOWOW「コヨーテ、海へ」などに出演。163センチ。血液型A。