渡辺謙(53)が主演映画「許されざる者」(李相日監督、来年秋公開)で過酷なロケ撮影に挑んでいる。このほど北海道内のオープンセットを取材陣に公開。現場は大雪山の麓で標高900メートルでロケ地がクマの通り道のため、全周約10キロの電線を張り巡らせる厳戒態勢を敷いている。

 渡辺が言う。「厳しさを体感していただけましたか。これ毎日やってますから」。天候の変化が激しく頻繁に暴風雨が襲ってくる。薄着の時代劇だが、深夜撮影は氷点下。寒さで凍えそうになる。クマの侵入を防ぐためコンテナ以外での食事は厳禁。携帯はつながらず、気分転換もままならない。「クマがいるところに僕らがお邪魔している。夜は真っ暗。何が出てもおかしくないですね」。

 全編北海道ロケ。撮影は9月22日に阿寒湖で始まり、10月1日から大雪山に入った。広大な平野に建物30個を3カ月間で設営。大自然を背景に渡辺と佐藤浩市の対決など緊張感あふれる撮影が続く。渡辺は「久々にスケールの大きい作品をやらせてもらっている」。

 李監督から「見たことのない渡辺謙を見せたい」と言われた。感情むき出しの演技の印象も強い渡辺だが「感情を表に出さず、内にためていく。それが今回の手応えかも」。

 明治初期の北海道が舞台。主人公は江戸幕府の武士の残党で貧困の末、賞金稼ぎとなる。佐藤演じる新政府の警察署長が主人公を追い詰めていく。クリント・イーストウッド(82)が監督・主演した米アカデミー賞受賞作のリメーク。【山田準】