大腸がんに対する腹腔(ふくくう)鏡下手術は広く普及していますが、全ての大腸がんで可能というわけではありません。

 大腸がんについてはガイドラインが出版されており、その中で高度の肥満の方、直腸や横行結腸のがん、大きく成長したがん、過去に複雑なおなかの手術を経験されている方、などの腹腔鏡手術は慎重に考慮すべきと明記されています。一般の方にもわかりやすく解説された冊子も出版されています。興味のある方はぜひ、参考にされてはいかがでしょう。

 一方、腹腔鏡手術は高度な技術が要求され、外科医ならだれでも安全にできるわけではありません。そこでポイントになるのが腹腔鏡の技術認定医制度です。日本内視鏡外科学会が世界に先駆けて確立させた認定制度であり、個々の外科医の技術が公平かつ厳しく審査されます。

 合格率は20~30%程度であり、非常に狭き門です。逆に、技術認定医であれば一定の技術は担保されることになり、患者さんにとっては朗報でしょう。通常、病院のホームページなどで確認できます。数多く腹腔鏡手術を行う病院では、複数人の技術認定医が在籍していることも珍しくありません。

 当科でも3人の技術認定医が在籍しており、大腸がんの腹腔鏡手術では必ず技術認定医が担当する方針としています。もちろん技術認定医でなくても、非常に卓越した技術をお持ちの外科医も数多くおられます。経験している症例数が重要であることも間違いありません。技術認定はあくまで参考になる資格であるとご理解ください。

 経験している症例数も重要です。ちなみに小生は30年にわたる外科医生活の中で、大腸がんの開腹手術は1500例以上、腹腔鏡手術は1000例以上を経験しました。多くの経験を有していることは、外科医にとっては重要な条件といえます。

 ◆大東誠司(おおひがし・せいじ)1956年(昭31)6月生まれ、岡山県出身。広島大学医学部卒業。広島大学病院、東京女子医科大学病院を経て、93年から聖路加国際病院に勤務。