今年は、さまざまな女性リーダーの言動が注目された。象徴は東京都の小池百合子知事(64)。22日、今年最後の会見で「10年に1度の『爆発の年』」と振り返った。そんな小池氏を、「全日本おばちゃん党」代表代行の谷口真由美・大阪国際大准教授は「究極のオッサン社会を生き延びてきた女性リーダーの最新モデル。小池氏の今後が、後進の女性リーダーの道を左右する」と評する。今日から「2016プレイバック」で、激動の1年を振り返る。

 初の女性都知事を生んだ流れの1つが女性票だ。庶民目線の政治を掲げ、フェイスブック上に「全日本おばちゃん党」を立ち上げた谷口さんは「化粧は崩れても、はちまきは崩さない。これと思えばまっしぐらの『アタックNO・1』のような姿が支持されたのでは」と話す。「自民党のベテラン女性議員の立場で出ていたら、あんな勝ち方はしていないはず。キャリアは長いが、素人感を感じる瞬間もある。政治家ならスマートに隠すところを、アラを見せていると思うことも。そこがチャーミング」。

 谷口さんは、橋下徹前大阪市長への言及も多いが、「都議会が何をしているか。議論の中身まで分かるようになったのは橋下さんと同じ」と話す。「橋下さんは、報われない府民と得している公務員という構図をつくり出した。小池さんは、男性社会でなかなか報われない女性の代弁者として支持を集めた」と分析。「ガラス張りの都政は面白く、みんな興味がある。またカタカナ言葉を言ってくれるのではと、突っ込みどころも満載」だという。

 小池氏を、「男社会の今を生き延びてきた女性リーダーの最新モデル。20年前の最新モデルが土井たか子さんだったことと同じ」と表現。「政治家という究極のオッサン社会の過酷な環境を生き延びた数少ない女性。すごいことだが、少数派は多数派に迎合しないと生きていけない。小池さんも風を読まないと生き延びてこられなかったはず」。

 谷口さんは「オッサン政治」という言葉を考案。自立した女性リーダーを生むため、女性議員を増やす必要性を訴えるが、日本の土壌はまだ整っていない。「閣僚の半分に女性を選んだ理由を、『今は2015年(当時)だから』と答えたカナダのトルドー首相のような人が増えれば、もっと違う形の女性リーダーが出てくると思いますが」。

 現状では、最新モデル・小池氏の言動がその環境づくりを左右すると感じる。「今後の女性リーダーの進む道が10年早くなるか、遅くなるか、小池さんの動き1つで決まる」。願うのは「オッサン社会から、1ミリでも脱却する」ことだ。

 「小池さんはオッサンの生態や、オッサン社会の怖さを知っている。都議会の『黒い頭のねずみ』には言っても、自分が関わってきた『敵にしたくないねずみ(自民党本部)』と使い分けるダブルスタンダードもある。とことん敵をつくらない点は橋下さんと違いますが、小池さんには、オッサンに立ち向かってくれるという女性たちの期待感がある。それを見失わないようにしてほしい」【聞き手・中山知子】

 ◆谷口真由美(たにぐち・まゆみ)75年、大阪市生まれ。大阪大大学院修了。大学で教える一方、専門の憲法や政治、人権などでメディアで発言する機会が多い。「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」などの著書も。父は元近鉄ラグビー部コーチ。夫と1男1女。