東京都の豊洲市場(江東区)の地下水から環境基準値を大きく上回る有害物質が検出された問題で、都議会の豊洲市場移転問題特別委員会は7日、参考人として石原慎太郎元都知事(84)を招致することを全会一致で決めた。東京ガスとの交渉役だったとされる浜渦武生元副知事の名も挙がり、ガス工場跡地の用地取得経緯について聞く方針。豊洲移転を一枚岩で進めてきた都議会自民党の一部からも真相究明を求める声が出て、石原氏“包囲網”は狭まりつつある。

 都議会が元都知事を参考人招致するという重い決断をした。都議会自民党で特別委委員長を務める山崎一輝都議(江東区選出)は「9回目のモニタリング調査で(基準を大きく超える)数字が出た。これだけ世論で注目され、豊洲の街全体にも関わってきている。議会の責任として話を伺いたい」と理由を語った。

 今後は「スピード感を持ってやる」と、早ければ2月末の招致を目指す。特別委の理事会では、検討する参考人を「石原氏、浜渦氏など」としており、今後、東京ガス幹部やOB、さらには安全と判断し工事を推し進めた舛添要一前都知事も検討される見通し。参考人招致には法的な強制力はなく、石原氏らが応じるかどうかが注目されるが、次回14日の理事会で具体的な日程や人選を詰める予定。

 これまで調査に関わった業者や、土壌対策を検討している「専門家会議」のメンバーも招致し、調査方法などについて質疑する。

 1月14日に第9回の調査が公表され、ベンゼンは最大で基準値の79倍、ヒ素は同3・8倍を検出。これを受け同20日、小池百合子知事は石原氏に厳しい対応に出た。石原氏の用地購入の責任を追及している住民訴訟に関し、石原氏に賠償責任はないとしていた従来の都の方針を見直すと表明。訴訟では、都が石原氏に578億円の損害賠償を請求するよう求めている。

 その後、都議会の「ドン」内田茂氏ら主流派と距離を置く自民の立石晴康、舟坂誓生両都議が、強い権限を持つ百条委員会の設置へ向け署名活動を行うと表明。7月の都議選の前哨戦とされた今月5日の千代田区長選でも、小池氏が推す石川雅己氏が圧勝した。

 「小池色」が広がる情勢で、石原氏への“包囲網”が狭まっている。移転を進めてきた自民も問題を看過できず全会派一致で豊洲問題の根源にメスを入れる形となった。【三須一紀】

 ◆参考人招致と百条委 参考人招致では委員会への出席や意見を求められるが、出席は強制されず、うその証言をしても罪に問われない。しかし地方自治法に基づく百条委員会はより強い権限を持ち、出頭や証言、記録提出を要求できる。偽証や証言拒否には禁錮刑などが科され、厳しさは参考人招致の比ではない。都議会共産党は6日、石原、浜渦両氏に加え、猪瀬直樹元知事や舛添氏ら19人のリストを発表し、百条委での証人喚問を求めた。