高齢ドライバーの事故多発を受け、全国の警察が運転免許証の自主返納を勧めている。申請した返納者に交付される運転経歴証明書を提示すれば、小売店や飲食店、宿泊施設などでさまざまなサービスを受けられる。警視庁や道府県の警察ホームページには、サービスを提供する店舗や施設の名前がズラリと並ぶ。

 サービスが充実した地方都市として知られるのが、福島県会津若松市だ。商工会議所が市街地の115店舗の協力を得て、08年(平20)8月から割引などのサービスを開始。8年半を経た現在も151店舗が協賛し、縦20センチ、横10センチの参加店ガイドブックを発行している。市内居住者だけでなく、市外や県外から来る観光客にも同じサービスを提供している。

 会津若松署管内では、このサービス開始後、運転免許証の自主返納者が急増。昨年は308人と、初めて300人台に乗った。商工会議所の吉田浩・企画開発課長(52)は「高齢者の事故発生件数も、管内では減っている。サービスの影響は、数字では分かりませんが、貢献していると思います」と強調した。同様のサービスを企画する全国の自治体から、電話相談が相次いでいるという。

 ただ、参加店によってサービス利用者数のばらつきが大きい。大型スーパーや交通機関では、年間30人以上が利用するが、サービス提供がほとんどない店も多い。ある茶販売店は全商品1割引きと休憩所、お茶の無料提供を掲げるが、地元の人が年2回ほど利用する程度。店員は「免許を返納したら、遠い人は来られなくなる」と話した。

 JR会津若松駅の観光案内所は参加店ガイドブックを置いているが、サービスについて聞かれることはない。免許返納者への周知不足が、課題といえる。吉田氏は「商工会議所の財源で、冊子や店頭に張るステッカーを作っている。放送局のCMでサービスを告知するのは費用面で難しい。電車やバスで来る高齢者や観光客にPRしたい」と対策を語った。【柴田寛人】