安倍晋三首相は4日、三重県伊勢市で年頭記者会見に臨み、5月1日の皇太子さまの新天皇即位に伴って改める新元号を、4月1日に発表すると正式に表明した。首相の支持層である保守派は事前公表に反対の立場だったが、首相は「国民生活への影響を最小限に抑える」ためだと、説明した。皇位継承前に新元号が公表されるのは、憲政史上初めて。新元号は、西暦645年に初めて使われた「大化」以来、248番目となる。

首相は伊勢神宮参拝後の年頭会見で、新元号の発表手続きについて「国民生活への影響を最小限に抑える観点から、先立って4月1日に発表する」と述べた。4月1日に改元政令を閣議決定し、現在の天皇陛下が公布され、新天皇の即位と同時に改元する。「歴史的な皇位の継承を国民がこぞってことほぐことができるよう政府として準備に全力を尽くす」と述べた。

今回の改元は天皇の逝去ではなく、あらかじめ期日が定まった退位に基づいて実施。「昭和」を受け継いだ「平成」は19年4月30日で幕を閉じ、新天皇即位と同時の5月1日午前0時に、改元となる。

この日の手続き公表までには、紆余(うよ)曲折を経た。改元までに一定の準備期間を設けることは既定路線だったが、自民党の保守派が事前公表に否定的で、調整は長期化した。

首相の支持基盤と重なる保守派は、天皇と元号が「一体不可分」とする伝統を重視。今の天皇陛下が在位している「平成」の間に次の元号が公表されると、天皇1代に1つの元号とする明治以降の「一世一元」の原則に反しかねないとの主張からだ。ただ、戦後制定された元号法では、「元号は、政令で定める」と規定。決定権者は、あくまで政府と位置づけている。

新元号の発表が事前の準備がないまま新天皇のもとで行われれば、中央省庁や民間企業の情報システム改修にも影響し、国民生活の混乱は避けられない。首相は今回、国民生活への影響回避を優先して対応する立場を示した。

公表日決定を受けて、政府は新元号の選定作業を本格化。既に専門家数人に候補名の考案を委嘱し、複数の案を得ているとされる。事前にメディアに漏れた場合に、政府は「差し替え」も辞さない意向とされる。憲政史上初となる皇位継承前の新元号公表は、情報管理にも細心の配慮がなされることになりそうだ。

◆改元 元号を改めること。古代中国の皇帝が時間も支配するとの考えから始まった。日本では645年に「大化」が初めて使われた。慶事や災害が起きた時に変えることがあったが、明治以降は皇位継承時に改める「一世一元制」を採用する。過去の元号は中国の古典などに由来。

◆新元号の選び方 <1>国民の理想としてふさわしい良い意味を持つ<2>書きやすく、読みやすい<3>過去に使われていない-などの点に留意し、数個の「原案」に絞り込み、有識者懇談会での意見聴取などを経て最終決定される。「大化」以降、出典元は中国の古典(漢籍)で、漢字2文字。アルファベットの頭文字が明治(M)、大正(T)、昭和(S)、平成(H)と重複しないものが選ばれる見通しだ。