大正から令和まで、4時代を生きた作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが9日、心不全のため、京都市内の病院で死去した。99歳。06年に文化勲章を受章した。文筆活動、僧侶としての法話を長年続け、多くの人の声を聞き、人生をやさしく説いた。

寂聴さんが京都に開いた寺院「曼荼羅山 寂庵(まんだらさん じゃくあん)」は11日、公式サイトで死去を発表。同寺院によると、10月から体調不良のため入院し、加療していた。葬儀は近親者のみで行うという。

徳島市出身。東京女子大在学中に結婚した男性と1950年に離婚し、作家に。1957年に発表した「女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)」で新潮社同人雑誌賞を受賞し、63年には自身の恋愛経験も込めた私小説的な作品「夏の終り」で女流文学賞を受賞し脚光を浴びた。

73年、51歳で岩手・中尊寺で得度し僧侶に。京都・嵯峨野の自宅、寂庵では法話を行うなどし、さまざまなメディアでの人生相談でも知られた。

作家としては92年、一遍上人を描いた「花に問え」で谷崎潤一郎賞受賞。98年、「源氏物語」を現代語訳。源氏ブームを起こした。近年も精力的に執筆し07年には「秘花」がベストセラーになり、17年には最後の長編小説となった「いのち」を出版。19年には「寂聴九十七歳の遺言」「はい、さようなら。」などを記していた。

◆瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)本名・瀬戸内晴美。1922年(大11)5月15日、徳島市生まれ。東京女子大卒。学生結婚した夫と北京へ。引き揚げ後の50年に離婚。文筆生活に入り「田村俊子」「女徳」などで人気作家に。「夏の終り」で女流文学賞受賞。73年中尊寺で得度。74年京都・嵯峨野に寂庵を構える。「花に問え」「白道」「現代語訳源氏物語」「場所」など著書多数。06年文化勲章受章。