日本ハム斎藤佑樹投手(27)が、昨年9月29日西武戦以来320日ぶりの白星を目前で逃した。楽天戦は1回に3者連続三振を奪うなど、序盤から気迫の全力投球。6回途中4安打2失点で勝ち投手の権利を持って降板も、3番手の宮西が8回2死から痛恨の同点2ランを浴び、今季初勝利はお預けとなった。甲子園では早実が8強に進出。母校の活躍を追い風にすることはできなかった。

 信じられない光景も、素直に受け止めた。一塁側ベンチにいた斎藤の目は真っすぐ、白球の行方を見つめていた。2点リードの8回。3番手の宮西が代打ウィーラーに、まさかの同点2ランを左翼席へ運ばれた。今季初勝利が消えても「宮西さんは、いつもチームを救っているスーパーピッチャーですから」。気丈に振る舞い、今季4度目のサヨナラ負けに終わった責任を痛感していた。「6回途中で降りて、中継ぎ陣に負担をかけてしまった」。

 リスクを承知の上で攻めた。カウントを稼ぎ、勝負を決める軸の球はともにフォークが主体だった。1軍での先発復帰戦だった8日楽天戦で手応えを得た配球の1つ。「握力も落ちやすくなるけど、目の前の打者を1人1人抑えないと」と、中継ぎ経験から構築した新スタイルで粘投。象徴は同点の4回1死二塁。前回登板で1発を浴びたペーニャに全8球中、フォークが7球。「当てたら何が起こるか分からないので、三振を取りにいきました」。狙い通りに仕留めて、この日も試合をつくった。

 やはり「鬼門」だった。コボスタ宮城は過去5戦未勝利。今季も4月17日に先発したが4回途中でKO。直後に2軍降格が決まった5年目の苦難のターニングポイントの地だった。辛酸をなめた球場で今季最長5回2/3を投げ4安打2失点、7奪三振。過去を振り払うような好投も、予期せぬ結末に栗山監督は「気持ちは感じたし、勝たせてあげたかった」と、悔しがった。

 この日も後輩の勇姿に刺激を受けてのマウンドだった。夏の甲子園で母校・早実が快勝。自身が全国制覇した06年以来のベスト8入りを決めていた。仙台市内の宿舎でテレビ観戦してから球場入り。「(自分も)負けられない気持ちはあった」。思いを体現する92球は、次のチャンスにつながるはずだ。【木下大輔】