異常事態だ。セ・パ両リーグは24日、23日までの1試合の平均入場者数を発表。阪神は前年同期比で12球団ワーストのマイナス9%であることがわかった。05年の実数発表以来、トップをキープしていた首位の座も、途中経過ながら陥落。ファン離れが明らかになり、坂井信也オーナー(64=電鉄本社会長)は「大変なことやと思っています」と話した。

 虎に異変だ!

 23日時点での各球団の入場者数が発表され、「凋落」を物語るデータが明らかになった。阪神は前年同期比で9%減となる1試合平均3万8036人だ。セ・リーグ全体では0・5%減。比率で言えば、12球団ワーストの落ち込みだった。03年のリーグ制覇から、常に上位争いを展開。甘い果実を得てきたが、いよいよ観客動員は落日の様相を呈してきた。

 虎の総帥も今までにない危機感を募らせた。坂井オーナーは大阪市内の電鉄本社で取材に応じた

 「去年との比較で、本拠地ゲームの割合もありますから。ただ、大変なことや、と思っています。一番、減っているのも事実ですから。分析をして、皆さんに喜んでいただくようにしないといけない。重く受け止めないといけないと思います」

 甲子園という偉大な「器」があっても、勝てなければ、ファンは呼べない。シーズン序盤からつまずき、5位に低迷。借金は「20」に迫る勢いだ。この10年は、敵地でも阪神戦ならば、球場が埋まる人気ぶりだったが、この日は三塁側から左翼席にかけて、空席が目立った。クライマックスシリーズ進出の可能性は消えていないが、ファンも見限っているのか。新しいスター選手もいない状況で、魅力あるチームづくりができていない。積極的な補強やドラフト戦略でチームを強化した巨人は首位を走り、入場者数も大幅増。その差は歴然だ。

 マツダスタジアムを訪れた虎党も嘆き節だ。広島市在住の中山和輝さん(27)は「ホームランが少ない。チャンスでも打てないし、得点シーンが減ってしまった。点が入るところをもっと見たい」と言う。この日も拙攻のオンパレードで2点だけ。おもしろみに欠ける試合が続く。「この時期でこの順位にいるのが、一番の原因。去年のこの時期もマツダで広島戦を見たけど、もっと阪神ファンが多くて、広島ファンが少なかった」と木佐征剛さん(40=出雲市)は昨年との雰囲気の違いを感じた。安国哲也さん(38=神戸市)は「とにかく、負けが多すぎる。やっぱり勝つ試合を見たい」と切実に願った。「強い阪神しか知らない人たちが離れていったんじゃないか」という声もあった。

 阪神はオフに向けて、中村勝広氏(63)を球団初のGMに招聘(しょうへい)し、コーチ陣の大幅なテコ入れも断行する構えだ。シーズンはまだ1カ月以上あるが、消化試合突入は時間の問題。ファン離れが進む中で、早急に改革に取り組む必要がある。

 ▼阪神の1試合平均観客動員数の前年比減少幅は、05年の実数発表後では、北京五輪のあった08年のマイナス5・3%が最悪。このままなら、ワースト記録更新となる。阪神は05年から昨年まで7年連続でセ・リーグ最多の観客動員を継続しているが、トップの座を明け渡す可能性が出てきた。