<広島2-1阪神>◇13日◇どらドラパーク米子

 傾斜を感じられないマウンドも、狭い球場も、阪神藤浪晋太郎投手(20)には関係なかった。米子の夜空に吹き飛ぶ汗とは対照的に、ダンディーな大人の投球が光った。淡々と投じ、要所で力を込めた。普段と異なる環境にもジャストフィット。7回6安打1失点、プロ初の2桁となる、10三振を奪った。

 「足場をしっかりつくって投げたので、そんなに気にならなかった。リラックスしてストライク先行で行こうと思っていました」

 マウンドの感覚を確かめるように、ゆっくりと立ち上がった。前回の中日戦で見せた荒々しい立ち上がりとは一変。直球は制球を重視し、ファウルでカウントを稼いだ。勝負球にはツーシーム、カットボール、チェンジアップを選択。押してだめなら、引いてみる。広島打線のバットは、次々に空を切った。

 7回に同点に追いつかれたが、課題だった「3巡目の壁」は突破する兆しを見せた。同点に追いつかれた後の無死一、二塁。投前のバントを冷静に処理して三塁で封殺。さらに1死一、二塁から、最後は変化球で二塁併殺。軸になる球を変化球に変え、失点を重ねかねない場面で粘った。「投球内容は悪くなかったけど、(同点に)追いつかれたのでなんも言えない。しっかりゼロで抑えないと。ただ、なんとか1点で粘れた。バタバタ崩れなかったのは、次につながる」

 前回から中6日の調整で、ブルペンに入る回数をこれまでの2回から、2日前の1回だけにした効果も出た。中西投手コーチも「よかった。7回もいつもなら2点、3点いかれるところだった」と評価した。“大人の投球”は、確実に進化を続ける証拠。その手で白星を量産するまで、あと少しだ。【池本泰尚】