乃木坂46と欅坂46の「坂道シリーズ」を担当する文化社会部横山慧記者が、グループの最新の出来事について、コラムで解説していきます。

 「イコマジョリティー」が、アイドル界に衝撃を与えた。

 今月18日放送のフジテレビ系「FNS うたの夏まつり~海の日スペシャル~」内で、「48グループ」と「46グループ」のメンバーによる、一夜限りのドリームチームがパフォーマンスした。事前に、「プロデューサーはあなた! 一夜限りの48&46ドリームチーム楽曲投票!」と題した視聴者参加型企画が開催され、視聴者がドリームチームに歌わせたい楽曲にTVリモコンのdボタンで投票する形がとられた。

 選抜総選挙2連覇を果たしたHKT48指原莉乃をはじめ、渡辺麻友、山本彩、松井珠理奈らAKB48グループを代表する10人と、乃木坂46、欅坂46の「坂道シリーズ」メンバー6人の計16人で構成。いずれも秋元康氏が総合プロデュースを手がけているが、メンバーが楽曲のコラボレーションをするのは異例。どのグループのファンからも注目され、放送当日はツイッターなどでも常に話題の上位にあった。

 投票対象曲は、「恋するフォーチュンクッキー」「365日の紙飛行機」「君の名は希望」「サイレントマジョリティー」の4曲。約106万票を獲得して1位になったのは、欅坂46のデビュー曲「サイレントマジョリティー」だった。2位のAKB48「恋するフォーチュンクッキー」も100万票を獲得したが、今年4月に発売したばかりで、女性アーティストのデビューシングル歴代最高の売り上げを記録した「サイレントマジョリティー」が真新しさでまさった形となった。

 本来、同曲のセンターポジションは欅坂46最年少の平手友梨奈(15)が務めているが、午後10時以降の生放送のため、この日は、年齢的に出演は難しかった。代わりにセンターに選ばれたのは、同じ坂道シリーズの姉貴分である乃木坂46でデビューから5作連続でセンターを務めた生駒里奈(20)だった。

 アイドルグループの代表曲を別のグループのメンバーがカバーする場合、批判される場合も多い。特に、「サイレントマジョリティー」はミュージックビデオ(MV)で見せる平手のクールな表情が話題で「平手色」が強いため、一部の欅坂46ファンからは抵抗も予想された。

 生駒には、相当なプレッシャーがかかっていたに違いない。関係者によれば、限られたリハーサル時間の中で、振り付けや歌詞を繰り返し入念に確認していたという。本番直前には、ステージ中央に立ち、緊張して表情が硬直していたが、隣にいた仲のいい渡辺麻友と抱き合い、励まされるシーンもあったという。

 午後10時28分ごろ、センター生駒が率いるドリームチームの「サイレントマジョリティー」が披露された。乃木坂46の楽曲「制服のマネキン」でも見せるクールな表情も得意な生駒は、キレのあるパフォーマンスを披露。先輩であるAKB48グループのメンバーを従えながら、りりしく、堂々とした顔つきで、中央で踊りきった。

 パフォーマンス後は一転、安堵(あんど)した柔らかいに表情戻り、謙虚にあいさつした。「初めてこうやって46グループの曲でたくさんの先輩方とコラボさせていただいて、欅坂46は乃木坂46の妹分で、こういった体験をするのが初めてなので、姉妹そろってすごくうれしかったです」。AKB48グループにも、欅坂46のメンバーにも気を配ったコメントで、拍手を浴びた。短い準備時間の中、後輩グループのダンスをすぐにマスターし、生駒を脇や背後から支えたAKB48グループのメンバーたちもさすがだった。

 ドリームチームがパフォーマンスする直前の午後10時25分の瞬間視聴率は12・9%で、この日の番組内(午前11時45分~午後11時24分)の瞬間最高視聴率を記録した(Perfumeパフォーマンス中の午後10時22分も同じ12・9%だった)。投票企画の注目度の高さがうかがえる。

 当然、反響も大きかった。放送後から「サイレントマジョリティー」のダウンロードは急増し、翌日19日の「アイチューンズ」の楽曲ダウンロードランキングでは5位、MVダウンロードランキングでは全体で1位になった。ユーチューブで配信されているMVの再生数も19日夜までに30万回以上増えた。リリースからは3カ月がたっているが、番組をきっかけに再注目された形だ。

 生駒は、現在発売中の月刊AKB48グループ新聞で、平手との初対談に臨んでいる。デビュー直後の平手に対しての言葉の中で、印象的なフレーズがあった。

 「とにかく、礼儀正しく、仕事を一生懸命頑張って、MVとかも一生懸命作るということをやっておけばいいと思う」

 来月、乃木坂46は結成5周年を迎える。生駒が堂々とパフォーマンスできたのは、スタッフやグループ全体が求めるものを常に考えながら、謙虚に、ひたむきに、場数を踏み重ねてきた結果だと思う。後日、生駒は周囲に「もっと『46』全体を高めていきたいと思いました」と充実した表情で話していたという。「46」の勢いを象徴するような一夜限りの「イコマジョリティー」は、群雄割拠のアイドル界でも突出したインパクトを残したと言っていいだろう。【横山慧】