遊びから五輪競技へ、スケートボードが20年東京五輪に向けて動き出した。日本ローラースポーツ連盟は、国際連盟(FIRS)や東京五輪・パラリンピック組織委員会の関係者が見守る中、初の「代表選考会」を開催。男女上位各10人が初開催の世界選手権(9月・中国)代表を目指す強化指定選手候補となった。初代の日本選手権覇者は女子が西村碧莉(15)、男子は池田大亮(16=ともにムラサキスポーツ)。選手たちの東京五輪に向けた争いも始まった。

 開会式は、選手への注意から始まった。「君が代が流れたら、ヘルメットや帽子は取ってください」。他競技なら常識でも、スケートボードでは違う。国内の大会で君が代を流すのは初めて。国を代表する国際大会もなく歌う機会もない。スケーターが君が代を聴くこと自体が異例だった。

 選手が若い。計61人が出場し、平均年齢は男子が15・1歳、女子は14・0歳。最年長は21歳で、最年少は10歳。会場こそ普段の大会も行われる室内パークだったが、60人の報道陣やテレビカメラの放列は初体験。「緊張しました。レベルも高いし、ヤバかったです」と男子3位になった静岡・島田二中2年の根附は驚きの表情で言った。

 国際基準のルールや、世界選手権の大会方式も決まらないまま行われた「強化指定選手候補選考会」。東京五輪では「ストリート」と「パーク」が実施されるが、世界選手権に合わせて「ストリート」だけで争われた。音楽とMC(司会)の声が響く中、手すりや階段を使って豪快にジャンプし、華麗に板を回した。採点方式で選ばれたのは男女各10人。今後は国内外の強化合宿も予定されるが、西川隆監督(51)は「技術以上に教えることは多い。まず経験です」と、若い選手に対し競技者としての意識改革の必要性を説いた。

 「まずはスタートが切れた。これからです」と日本ローラースポーツ連盟の宮沢武久スケートボード委員長。大会後、選手たちは楽しそうに遊びだした。「片付けがあるので、スケートボードはやめてください」のアナウンスが響く。五輪競技の常識では考えられない光景だが、スケートボードは遊びの要素を残しながらも東京五輪へ向けて1歩を踏み出した。【荻島弘一】