2005/11/24
メジャーGMは「能力優先」
ストーブシーズンまっただ中の米国で、その動向が注目されているのは、何も大物FA選手だけではない。
Wシリーズ終了後、4週間が経過しても、今だにレッドソックスのGMは決まっていない(11月21日現在)。幾多の候補者の中で3人まで候補が絞られているが、チームの「舵取り役」ともいえる重職が、約2カ月近くも空席という異常事態。裏を返せば、それほどまでに米国ではGMを厳選していることの表れでもある。
米国の「能力優先主義」は野球界だけに限ったことではないが、特にGM人選では顕著とも言える。今オフ、レンジャースのGMにジョン・ダニエルズ氏(前GM補佐)が、史上最年少の28歳と41日の若さで就任した。大きな瞳と童顔は、外見だけなら普通の「学生風」だが、周囲の評価と期待度は抜群。前GMのハート氏は「彼のリーダーシップはすばらしい」と信頼を寄せており、ダニエルズ氏自身も「(GMになることが)長い間の夢だった」と、重責にもまったくひるむ素振りは見せていない。
レ軍だけでなく、ここ数年来、メジャーの各球団ではGMの若年化が進んだ。ヤンキースのキャッシュマン氏は、1998年に31歳の若さでGMに就任。今オフには3年・約5億7500万円の条件で契約を更新した。2002年オフ、松井獲得の直前に「ヤンキースのGMにクリスマス休暇はない」と言った言葉は有名で、その多忙さは半端ではない。周囲からの批判・中傷も数知れず、精神的にもタフでなければ務まらない。だからこそ、明晰な頭脳や豊富な経験だけでなく、若さが要求されるともいえる。
実際、今年88年ぶりに世界一に輝いたホワイトソックスのケン・ウィリアムス氏(41)は36歳でGMに就任し、徐々にチームの体質改善に取り組んだ。それが実を結んだのが、5年目の今季だった。昨年の覇者・レッドソックス前GMのテオ・エプスタイン氏(31)は、2002年オフ、当時の最年少となる28歳で就任し、2年目でWシリーズを制覇。契約切れに伴う延長交渉がまとまらず、今オフ退団したものの、思い切りのいいその手腕は高く評価された。ドジャースの場合、今オフには有力候補として、現GM補佐のキム・アング氏(36)と会談。結果的に初の女性GMは誕生しなかったが、近い将来、再び名前が挙がることは間違いない。その一方で、フィリーズは、かつてブルージェイズ、マリナーズで手腕をふるったパット・ギリック氏(68)を招聘(しょうへい)。球界内部を知り尽くした大ベテランに、チーム再建の命運を託した。
少なくとも、そこには年齢、性別、人種などの「枠」は存在しない。さらに、チームを強くするうえでGMの人選が最重要であるという認識に、変わりはない。
日本球界の「代表・GM職」にしても、豊かな発想力や熱意がある人材であれば、性別や年齢を問う必要などない。ただ、長年にわたって年功序列優先主義が定着している日本社会で、今すぐに斬新な人選が進むとは考えにくい。しかも、依然として親会社やグループ企業内での「人事異動」などという感覚が残っているとすれば、資金力の有無にかかわらず、その球団がトップに立つ可能性は極めて低い、と断言していい。
遅々として進まない「球界再編」にしても、その延長戦上にある。
では、何が必要なのか。
メジャー球団のGM人選には、そのヒントが含まれているに違いない。
【米国駐在 四竈(しかま)衛】
四竈 衛(しかま・まもる)

日刊スポーツ東京本社野球部。北関東支局を経て、巨人、ヤクルトを担当。98年から米国に駐在し、メジャー担当。全米野球記者協会(BBWAA)会員。90年入社。
|