魚谷智之初SG! 悪夢から855日目の優勝

- 全日本選手権最終日 SG初優勝を飾った魚谷智之は笑顔でウィニングランをする=2006年10月29日、福岡競艇場
◇第53回全日本選手権優勝戦H1800◇29日◇福岡競艇最終日第12レース
魚谷智之(30=兵庫)が俊敏なまくり差しで、兵庫に46年ぶりのビッグタイトルをもたらした。枠なり3コースから、まくる吉川元浩とイン松井繁の間に鋭く切り込んで抜け出し、SG2度目の優出でうれしい初優勝をもぎ取った。今年の獲得賞金は8946万5000円(5位)となり、賞金王決定戦出場がぐっと近づいた。兵庫勢のSG制覇は60年5月の平和島MB記念の井上一二郎(かずじろう)以来46年ぶり。
2コース吉田の先まくりに乗って、鮮やかなまくり差し。魚谷はいつも通りにスタートを決めて、体の反応するままにハンドルを切った。緊張の舞台で、普通に走る。一番難しいことをやってのけた。盟友の吉川とラップ状態も、2周目から完全なリードを守り、ゴールでは無我夢中でガッツポーズをした。
とある夜。偶然、席を共にした田中信一郎から、熱いエールを送られた。「そういえば長い間、兵庫からSG覇者は出てないんやな。そろそろ魚ちゃんも、やらなあかんで!」。魚谷の能力、人間的資質を認めての心を込めた言葉に、帰り道の魚谷は何か魂を込めるような表情で考え込んだ。「僕ね、いっつも考えてんねん。どうしたらSGを勝てるんか。多分(吉川)元浩を同じこと考えてると思う。紙一重のものかも知れへんけど、それを少しずつでもいいから追求していきたいねん」。
04年6月27日の浜名湖GC優勝戦でF。しかしSGを1年間棒に振る悪夢を、魚谷はプラスに転化した。メンタルコントロールの不器用さを克服するために、専門の講師を調べまくった。「僕、もう30歳やで。必ずできる子になってみせる。あと1年待って」。精神面の強化がSG制覇につながった。
優勝戦の29日は妻泰子さんの誕生日。受話器のむこうで泰子さんは泣いていた。「こんな素晴らしいプレゼントをくれるなんて、夢にも思わなかった」。魚谷はどでかい出世魚。進化を続けて、賞金王決定戦でも普段着のレースをしてくれることだろう。
[2006年10月30日付 紙面から]
