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第5回 業界初の大みそか決戦に期待

 30日の競輪グランプリを中継で見ていた。すると、スタンドは立すいの余地もないほどのファンが埋め尽くしていた。これぞ年末の大一番といえる2万人を超える入場者。これを見て、オート業界初めての大みそか決戦となるSS王座にも、期待を膨らませている。

 オート業界を代表する8人は出番のない開催4日目を、それぞれ有意義に過ごしていた。中継を終え、夕方のロッカールームに足を運ぶと、整備に没頭する有吉、荒尾、池田がいた。永井、岡部、中村はかなりゆとりを持って、くつろいでいる。手は動かしながらも、どこか「余裕がありそう」に感じられた田中、浦田。誰が勝ってもおかしくない戦国模様の一戦は、優勝者が誰かというよりもまず事故なく、そして「これぞオートレース」という至高の戦いを期待したい。

 決戦はまもなく。0線に並ぶ8選手にはファン、そして関係者の夢が託される。それを背負っての一戦は、紛れもなくオート史に残るであろう。「大みそかの10周回」。私もファンと一緒になって楽しみ、実況したい。

第4回 「感動をありがとう」思い込め実況

 第23回のSS王座決定戦は、初のおおみそか開催。トライアルの3日間が終了し、大一番の8人が出そろった。しかし、そこには全国ナンバーワン高橋の名はない。天下の絶対王者の08年は今日で終わる。正直、この状況は想像していなかった。まさに波乱といえる。

 トライアルメンバー16人を取材していても、例年以上に各選手がこの大会に懸けていた。それぞれが言葉で形容しがたいほどのプレッシャーと闘っていたに違いない。だからこそ、敗れた8人は1日や2日でモチベーションを立て直せというのは酷かもしれない。

 しかし今日は、おおみそかに次いで、入場者が劇的に増加する12月30日。11Rの8人は、一足早く今日が走り収めとなる。1年間、本当に一生懸命戦ってきた。私も「感動をありがとう」の思いを込めて実況したい。そして、ファンの皆さんにも11Rの8人に大きな声援をいただきたい。その声援が何よりの勇気になるはずだ。

第3回 荒尾「自」力で切り開く!

 今年の世相を表す漢字は「変」。世界的にさまざまな変化が多かった1年を象徴してのもの。では個人の1年はどうだったか、荒尾聡(27=飯塚)に振り返ってもらった。すると「自」と表現。それは自分のレーススタイルも確立でき、SGでも自信を持ってレースに臨むことができたからだそうだ。

 今年は大きな不調もなく、安定した戦績で「順調に来ている」とここまでを振り返る。ただ、万全の備えで臨んだはずの今回、思わぬマシン不調に苦しめられた。「この状態じゃ駄目でしょー」。2日目を終えて4、5着。3日目は勝負駆けとなった。当然、荒尾のロッカーは“戦場”と化していた。同地区の先輩、後輩が手伝い、マシンを囲んでの大整備。「やれるだけのことはやります」。何だか一昨年のSS王座トライアルを見ているようだ。8着に敗れ、後がない状況で施した大整備が功を奏し、起死回生の1着取りで王座戦に進出した状況に似ている。

 3着以上が決定戦進出条件となるトライアル最終戦は12Rに出走。絶好の4番車に入り、「自」らの力で展開を切り開く。

第2回 一夜での変身狙う高橋貢

 現ランク1位の高橋貢(37=伊勢崎)は直前節の川口一般戦に参戦した。予選、準決勝を4連勝で優出。文句のつけようのない勝ちっぷりでの優出に、さぞかしリラックスと思いきや、話しかけづらい雰囲気。一般戦とは思えない険しい表情での整備は、今回のSS王座を見据えたものだった。「業界が一丸となって盛り上げているんだから、勝ち負け以上に全国1位のレーサーとして“魅せる”レースをしないといけない。そのためには今回(前節)を生かさないといけないんだ」。日々、試行錯誤の整備を繰り返す姿にNO・1のプライドを見せた。

 今年は年頭の快進撃から大きなスランプもなく、ここまで来た。しかし、最も力の入る今開催、初日は高橋らしからぬ内容で4着に敗れた。早速、整備に取り掛かり、競走車からエンジンを外してロッド交換。一夜での変身を狙う。

 2日目は12Rに出走。ここで勝てば王座決定戦進出は大きく見えてくる。数々の記録を塗り替えたオート界史上最強の男が、勝利に執念を見せる。

第1回 森、プレッシャーを活力に

 前検日のロッカールームはSGならではの緊張感。地元代表の森且行(34)はいつも通りの表情だったが、念願のSS王座戦を目前に控えた「いよいよ始まる」という高揚感が伝わってきた。

 その森のロッカーには、11年前のデビュー戦翌日のスポーツ新聞のコピーが張ってある。大々的に1面報道された当時のものだ。デビュー戦の入場者は3万5000人。最寄りの西川口駅改札口までバスの行列ができていたそうだ。「もう時代が違うから、そこまでお客さんは来ないでしょ」。確かに世間は未曾有の不景気。11年前と条件が違うことは分かっている。ただ、森が決定戦に勝ち上がれば業界あげての大みそか決戦はより一層、盛り上がるに違いない。「地元はただ1人だし、プレッシャーもあるけど、ど~しても大みそかまで残りたいんだ」。その強い思いを胸に前検日は走行練習、整備に時間を費やした。

 SS王座の地元選手の優勝は、88年第2回大会の且元滋紀以来、20年も遠ざかっている。地元意識の強い川口地区のファンも久々に「地元が勝てるかも」という期待が少なからずある。それは森にも十分すぎるほど伝わっている。そのプレッシャーを活力にできる真の強さが、森にあると信じたい。

 ◆堂前英男(どうまえ・ひでお)1975年(昭和50年)10月15日、東京都生まれ。日刊スポーツレース部を経て、アナウンサーに転身。現在、川口を中心に全国のオートレース中継や、競艇などで実況も務める。



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