3月3、4日。大阪・岸和田総合体育館でFリーグプレーオフ(PO)決勝が行われ、シュライカー大阪がペスカドーラ町田を破って初優勝を果たした。Fリーグ創設10年目で、9連覇した名古屋以外のチームが優勝する新たな歴史の瞬間だった。

 Fリーグは07年に日本のフットサルのトップリーグとして創設された。現在もプロとアマが混合しており、名古屋がFリーグ唯一の完全プロクラブだ。優勝した大阪の選手は午前にトレーニングを行い、午後はフットサルスクールでコーチを行う、いわゆる「セミプロ」だ。

 チームを率いて3季目の木暮賢一郎監督(37)は、就任当時のことをこう振り返った。「大阪に来たときに考えたことは、フットサルの戦術のことではなく、1チーム(名古屋)が抜けているFリーグを変えたいということでした」。大阪を優勝させることが日本のフットサル発展につながると信じていたから、就任早々、選手に「歴史を変えよう」と訴えた。

 木暮監督が選手に一貫して求めたのは「プロフェッショナルとして取り組む姿勢」だ。相手がプロチームだろうが、アマチュアチームだろうが関係ない。自分たちのセミプロという立場も関係ない。「クラブと契約して戦っている限り、ピッチでもトレーニングでも100%戦うのがプロ。ピッチに入れば仲間のために戦うのがプロだ」と言い続けてきた。1季目はリーグ戦5位でプレーオフに進出して最終2位。2季目はリーグ戦4位で最終3位。常にリーグの上位に位置しながらも、満足することはなかった。

 木暮監督は今季開幕前に「優勝するシーズン」と宣言した。リーグ戦が始まると、自慢の攻撃力で勝利を重ね、27勝2分け4敗でリーグ戦1位。得点王のヴィニシウス(30)新加入のチアゴ(27)アルトゥール(26)のブラジル人3選手がリーグ得点1~3位を独占した。日本代表の小曽戸允哉(33)加藤未渚実(24)も活躍。リーグ総得点は186となり、13年度の名古屋の178を更新した。

 PO決勝第1戦では、王者名古屋を破って勝ち上がってきた町田にホームで敗れた。だが、第2戦では試合終了まで残り5秒でFPチアゴがパワープレー返し。同点でも優勝が決まったが、ホームに詰めかけたサポーターに白星での優勝を届けた。

 優勝決定後、佐藤亮(とおる)主将(31)は「目指すのは10連覇。ここがスタート」と宣言。さらに「見に来てくれた子どもたちが目指せる環境・舞台を作りたい。フットサルファミリーのみんなでこれからのフットサルを盛り上げていきましょう」と、フットサル界の発展を訴えて拍手を浴びた。

 大阪の初優勝はフットサル界をけん引してきたプロチーム名古屋の牙城を崩したというだけではない。タイトルを懸けて戦えるチームが増えると、白熱した対戦が増える。面白いと思った観客がリピーターになり、フットサルの輪が広がっていく。「このスポーツを発展させたい」という木暮監督の思いは選手に伝わってサポーターへとつながり、そしてフットサルの発展へとつながっていく。


 ◆中島万季(なかしま・まき)1988(昭63)年8月11日、鹿児島県薩摩川内市生まれ。鹿児島大から11年に薩摩川内市役所に入庁。16年4月から日刊スポーツに出向し、高校野球やアメリカンフットボール、高校ラグビーなどを担当。