SNSが、サッカー界のクラブ、選手、サポーターの距離感を縮めています。ツイッターやフェイスブック、インスタグラムで選手の普段の生活や、試合直後のコメントが見られる時代になりました。

 Jクラブにとって、SNSの活用は広報戦略の重要なツールです。日本語だけでなく、英語のページを開設しているクラブもあります。J3の藤枝MYFCは、「カンボジアの至宝」と呼ばれるカンボジア代表FWチャン・ワタナカ(23)の加入により、クメール語(カンボジアの公用語)の公式フェイスブックを2月に開設。「いいね」の数は約5万と、現地での人気の高さをうかがわせます。

 SNSを活用している選手も多くなりました。清水エスパルスFW鄭大世(33)は、使いこなしてコミュニケーションを取っています。サポーターのつぶやきに、釣りを楽しむプライベート写真を添付して返信するなど、オチャメな一面もあります。鄭大世といえば、プレースタイルから豪快なイメージですが、SNSを通じて抱えている思いはその反対。「自分は内気だから、人が自分のことをどう思っているのかが気になる」と話していました。

 例えば鄭大世のゴールで清水が勝利した試合後は、うれしい書き込みが増えます。ゴールを決めなくても、試合中のプレーの細かな部分を見て意図を感じ取ってくれている人がいると分かると、うれしいそうです。選手がサポーターと直接話す機会は、公開練習後の後くらい。SNSの良い面について「普段は大勢の人とかかわる機会が無いし、知らない人と会う機会も無い。コミュニケーションをとるのは好きなので、楽しい」と明かしてくれました。

 モチベーションになる一方で「100件いいことが書いてあっても、1件の悪口があれば傷つくこともある」。それでもSNSを続け、サポーターとの交流を続けています。理由は「批判も肯定もされてこそ、一流になれる。人の関心があってこその公人」。プロサッカー選手としての思いがありました。

 ケルン(ブンデス)時代には友だち申請でページがパンクするなど、SNSでもサッカー選手への注目度は高かったそうです。これから日本でも、SNS熱が高まる可能性は十分にあると感じます。



 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、15年5月から静岡支局に異動。今年はJ1清水とJ3藤枝の担当。SNSでは伝わらないことを、新聞で伝えます。