【ドーハ(カタール)=4日】日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(57)が、「ヨルダン戦集中モード」でアジア制覇へ向けた開幕ダッシュを果たす。アジア杯1次リーグ初戦のヨルダン戦(9日)に備え、午前にチームとともにドーハ入り。監督就任後初の公式戦となる初戦を間近に、1次リーグの他の対戦国シリア、サウジアラビアの情報を封印。選手にはヨルダン戦の情報のみを伝える。中国で開催された04年大会の準々決勝で日本は格下とみられたヨルダンに大苦戦。PK戦の末に辛勝した苦い記憶があるだけに、一戦必勝の態勢を整える。

 決戦の地に降り立ったザッケローニ監督は、普段通り冷静だった。空港の荷物受け取りエリアで地元テレビ局の直撃取材を受けたが「アジア杯は非常に大切な大会。厳しい戦いになると思う。日本は平均24・5歳くらいの若いチームだが、次のW杯を目指した上でのチームづくりになっている」と笑顔で対応した。

 その笑顔の裏では、既に戦いが始まっていた。これまで指揮を執っていたACミランやウディネーゼ時代と同様に、選手に伝える情報は次戦の相手のみ。代表関係者には「今はヨルダン戦に集中する」と話し、9日の初戦終了までは1次リーグで対戦するシリア、サウジアラビアの情報を選手には与えない。

 1月2日にドバイなどで行われたヨルダン-ウズベキスタン、シリア-UAE戦を代表スタッフが偵察。情報収集に余念はないが、同関係者によると「ヨルダンの情報を入念にチェックするよう指示が出た」という。ヨルダンのハマド監督は、04年アテネ五輪でU-23イラク代表を4位に導いた名将で戦術家だけに、詳細な分析は必要不可欠だ。

 実際、日本は04年大会で格下と思われたヨルダンに大苦戦。そんな「負の記憶」もザッケローニ監督は既に把握している。特にヨルダンにはRマドリードの下部組織で育ち、現在はルーマニアのビストリツァ所属のFWバワブらタレントもおり、油断すると足をすくわれる可能性はある。

 この日の夕方からは93年10月に日本が目前で米国W杯出場を逃した「ドーハの悲劇」の舞台アルアハリ競技場で練習を実施。冒頭15分以外は非公開で情報漏れを警戒し、その中で選手は上下青の新モデルの練習着で汗を流した。「(今のチームは)経験が多少少ないが、いいチームに仕上がっている」と言い切ったザッケローニ監督。セリエAで培った一戦必勝の精神をチームに注入し、ヨルダン戦でアジア制覇に向け幸先良い勝ち点3をつかむ。【菅家大輔】