絶対に負けられない戦いが、ここにもある-。アジア・サッカー連盟(AFC)総会が30日にマナマで開催され、国際サッカー連盟(FIFA)の理事選挙が行われる。日本協会からは田嶋幸三副会長(57)が立候補する。日本人のFIFA理事は、小倉純二日本協会名誉会長が11年に退任して以来、4年近く不在。日本やアジアのサッカー発展のためにも悲願のFIFA理事のイスを目指す田嶋副会長にインタビューした。

 4年の積み重ねが、静かな自信につながるのだろうか。田嶋副会長は選挙まで2週間を切っても、落ち着いていた。「7人の立候補者が出た。何でこの人が、という人もいたけど、7人だろうが、10人だろうが勝てる準備はしてきましたから」と言い切った。

 11年1月の選挙で19票を得たものの落選。あれから4年、多くの経験を重ねてきた。AFC理事に就き、不正続きのAFCの浄化を図るため、11~12年には「評価委員会委員長」にも就任。ハマム元会長らの永久活動停止処分につながる調査に携わってきた。

 田嶋氏 4年間、アジアのサッカーのため誠心誠意やってきた。FIFA理事選挙は公職選挙法のない選挙だけど、日本は公益財団なので選挙にお金は使えない。長年、日本協会が続けてきたアジア貢献事業(※注参照)などフェアに正直にやる。日本の利益だけでなく、世界のサッカーのことを考えることが一番大事だから。

 3つの「選挙公約」も日本だけでなく、アジア、世界を見据えたものだ。

 (1)アジアのレベルアップ FIFAと協力してアジアのレベルアップを推し進めたい。FIFAの予算はAFCの40倍以上。FIFAと協力して指導者育成などを進めたい。アジアの強化なくして日本の強化はないわけですから。

 (2)財政面の透明化 AFCで評価委員会委員長を務め、財政的なものの透明性を訴えてきた。だから、FIFAから各大陸連盟にお金が分配され、しっかり使われる流れをつくりたい。

 (3)子供たちが安心してサッカーができる環境整備 FIFAの依頼でパレスチナとイスラエルの仲裁のオブザーバーを務めている。政治的なことはできないが、サッカーの力で紛争地域でも子供たちが笑顔で安心、安全にサッカーができる環境をつくりたい。

 全てはアジアのサッカーのために。その心意気で2度目の選挙に勝ちにいく。【取材・構成=菅家大輔】

 ※注 日本協会は長年、アジア貢献事業を行っている。JFA公認指導者の海外派遣も主な事業の1つで、99年12月にマカオ代表及びユース代表の監督として上田栄治氏を派遣。以降、多くの指導者が海を渡った。現在は17人がアジア各国の男女、世代別の代表監督や強化責任者などとして派遣されている。さらに、審判インストラクターやコーチなどの指導者養成の事業も進めている。

 ◆田嶋幸三(たしま・こうぞう)1957年(昭32)11月21日、熊本市生まれ。浦和南高3年時に全国選手権優勝。筑波大を経て80年に古河電工入りしたが、82年に25歳で早々と引退。その後、ドイツ留学してコーチ資格を取得。U-17日本代表監督などの監督を経て、日本協会技術委員長に就任。06年に同専務理事、10年に専務理事兼副会長。11年からAFC理事。