女子日本代表なでしこジャパン(FIFAランク4位)が2大会ぶり3度目の優勝を逃した。韓国(同17位)に逆転負けし、1試合を残してV逸が決まった。前半30分に追加招集のMF中島依美(24=INAC神戸)が先制したが、後半9分にパスミスを奪われて失点。同ロスタイムには不用意なファウルから決勝FKを浴びるなど、1日の北朝鮮戦(2-4)から先発9人を入れ替えた「チャレンジなでしこ」の“幼稚さ”が目立つ敗戦だった。

 なでしこの花は、つぼみのまま開かなかった。1-1の後半ロスタイム3分、若さが失点に直結した。韓国FW張に対し、右サイドバック挑戦2試合目のMF京川がファウル。ゴールから遠ざかるドリブルにもかかわらず、不用意に手で押さえて笛を吹かれた。「あの時間帯で、他にもDFがいたので自分がいかなくてもよかった」と反省したが、時すでに遅し。ペナルティーエリア手前で与えたFKをMF田に決められた。残り時間と位置を考えれば判断ミス。試合運びにも、甘さがにじみ出た。

 1点のリードを消された場面も若さが出た。後半9分、DF薊からMF上辻へのパスミスをMF趙にさらわれた。そのままゴール前まで運ばれると、DF陣はジリジリ下がる一方。代表初出場の村松が間を詰め切れず、大きく振りかぶったシュートで同点とされた。

 2連敗で2大会連続のV逸。W杯メンバーが6人しか残っていないとはいえ、世界の準優勝国が1試合を残して東アジアで敗れた。佐々木則夫監督(57)は「幼稚な部分が出た。彼女たちの甘さ。単純な若いミスでやられた」と指摘。2-4で敗れた1日北朝鮮戦から先発9人を入れ替え、フィールドプレーヤーを全員起用したが、有望株はまだ青かった。

 トラップミスも国際舞台では目立つ。パススピードも遅く、何度も速攻を浴びた。それでも、悲観する内容だけではなかった。「チャレンジなでしこ」の名の通り、果敢に攻めるプレーもあった。指揮官が「非常にアグレッシブだった」と評価した京川が積極的にオーバーラップ。後半29分に代表デビューのMF柴田と連係して右サイドを崩し、柴田がフリーに。「足を振ろうとしたら引っ掛かっちゃった」と、打てば入る好機で空振りしたが、可能性を示した。

 2大会ぶりの優勝は消えたが、まだ試合はある。8日の中国戦へ、佐々木監督は「1勝もせずに日本へ帰るなんて、あり得ない。何が何でも勝つ。経験のない子たちには、勝つ味を知ることで成長してもらう」と命じた。招集を見送られた主力メンバーの強みは経験。チャレンジなでしこは、失敗し、悩み、はいつくばって、悔しさを血肉に変えていくしかない。【木下淳】