日本代表DF吉田麻也(27=サウサンプトン)が、停滞する攻撃陣に活を入れた。わずか1点のリードしか奪えず迎えたカンボジア戦の後半5分、狙い通りのミドルシュートでチーム2点目。不満がたまる展開を打開した。プレミアリーグの日本人最多出場記録(66試合)に並んだ守備の要が攻撃でも存在感を高めた。

 一刻も早く欲しかった2点目はDFの吉田がもぎ取った。後半5分、カンボジアを押し込んで押し込んで攻め上がり、MF山口の横パスを受ける。トラップから、上体を抑えて右足を強振。地をはうボールがDFの股を抜き、GKの指先をかすめ、対角線のゴール左に飛び込んだ。「ミドルは、おそらく高校生以来だと思います。気持ちいいですね…」。停滞した攻撃陣に刺激を与える一撃を、照れくさそうに振り返った。

 歴史に名を残した後の祝砲だった。先月30日のノリッジ戦でプレミアリーグ通算66試合目の出場となり、MF稲本と並ぶ日本人の歴代1位に躍り出た。勲章を手土産に代表へ合流。守備リーダーながら、ハリルホジッチ監督と攻撃面でも議論するほど信頼は厚く「(6月の)シンガポール戦は前線に上がるか探り探りだったけど、監督と話して共通意識を持てた」。任務遂行のチーム2点目だった。

 守備は暇だった。10人を自陣に集めた相手のシュートは前半の1本だけ。危機管理も完璧だったが「やっと1歩を踏み出せた」と神妙に言う。「シンガポール戦や(国内組で初の最下位に終わった)東アジア杯で国民の皆さんを失望、落胆させてしまった。これから巻き返していきたい」。“英国紳士”らしい堅実な仕事ぶりだった。【木下淳】