ヤット

 独でひっ飛べ

 キバレ!

 ヤット!

 (2006年)6月12日にサッカー日本代表が、オーストラリアとのW杯初戦を迎える。個人的なイチ押し選手は、MFの遠藤保仁だ。

 冒頭の「キバレ」はご存じの人も多いでしょうが、鹿児島弁で「頑張れ」の意味。ヤットは、ミドルシュートなどで定評のある日本代表・遠藤のニックネーム。残念ながら彼を取材した経験はないが、私と同じ鹿児島県人だけに親しみもわいてくる。強引に彼と私の共通点を探ってみた。

 その<1>

 04年11月の市町村合併により、遠藤の出身地・鹿児島郡西桜島町は鹿児島市に吸収合併。私の出身地、揖宿(いぶすき)郡喜入(きいれ)町も同時期に鹿児島市となった。

 その<2>

 冬の高校サッカー選手権で、私は04、05年度の2大会、鹿児島実を担当した。04年度には2度目の全国制覇。05年度には準優勝の原稿を書いた。我が母校ではないが、鹿児島実の校歌を完ぺきに歌えるほどで「不屈不撓(ふとう)」の校訓は私自身もお気に入りだ。鹿児島実の選手権初Vは、静岡学園との両校優勝で95年度大会。当時遠藤は鹿児島実の1年生。時代は違えどもともに、優勝の喜びを味わったV戦士?

 でもある。

 その<3>

 高校時代の私の親友が、遠藤と同じ桜洲(おうしゅう)小─西桜島中出身。ちょっと苦しい…。

 そんなわけで、つながりの多い選手だった。でも、ニックネームの「ヤット」って何???

 遠藤の恩師でもある鹿児島実の松沢隆司総監督に聞いてみた。

 松沢総監督

 ヤットは自己主張をしない男でね。簡単にいえば、面倒くさがり屋ですよ。最近ではどうか分からないが、Jリーガーになったころは、年賀状もあんまり書かないと言っていたし、お世話になっている人には年賀状ぐらい書かないと、と話したんだよ。ヤットが、重い腰を上げたときは「やっと(ようやく)ね」という意味で、ついたんだよ。

 遠藤は地元桜島ではサッカーの上手な3兄弟として知られていた。末っ子の遠藤だが、兄2人はともに鹿児島実のエースナンバー「10」を背負った。しかし、遠藤の高校時代は背番号「8」。松沢総監督は「10番がほしいって言えばよかったんだよ。10番は誰でも良かったけど自己主張をしなかったからね」と話した。

 西桜島役場(現桜島支所)には桜洲小の在校生から先輩に向けて「頑張れ遠藤」と書かれた横断幕が飾られている。桜島からフェリーを乗り継いで約20分の鹿児島市役所にも、玄関ロビーに日の丸が掲げられ、来客者が応援メッセージを書きつづっていくという。

 8日付の本紙2面に「サムライ23」と題した代表選手紹介の23回目で遠藤の記事を読んだ。00年のシドニー五輪で控えに甘んじた悔しさがにじみ出たコメントがあった。出場機会がどんな場面で訪れるか分からないが、自己アピールを存分に期待したい。泣こよっか、ひっ飛べ(鹿児島弁でがけっぷちに立ったら、泣いている暇はない。飛んでしまえの意味)。【復刻版】2006年6月12日付、社会面コラム「見た

 聞いた

 思った」より