<ロンドン五輪アジア2次予選:日本3-1クウェート>◇第1戦◇19日◇豊田ス

 MF清武弘嗣(21=C大阪)の2得点に絡む活躍で、関塚ジャパンが第1関門突破へ大前進した。前半18分に頭で先制点を奪うと、37分にはCKから追加点をアシストし、クウェートに完勝。エースFW永井謙佑(22=名古屋)がケガで先発を外れるなか、5月に結婚したばかりの新婚男が、一躍ヒーローに躍り出た。アジア2次予選は、23日に敵地での第2戦が行われる。大きなアドバンテージを持って、今日20日に中東に飛び立つ。

 清武には確信があった。「ボールは絶対に来る」。前半18分、左サイドでDF比嘉が上げたクロスが前で競ったFW大迫とGKのどちらにも触れないで、流れてきた。無心に横っ跳びした。「決して苦手ではない」というダイビングヘッドをぶち込んだ。そしてすぐに、最愛の人の顔が浮かんだ。

 清武

 嫁が今日見に来てくれていたんで、良いところをみせられた。

 誇らしげに、いつもは真新しい結婚指輪が輝いているはずの左手薬指にキス。試合中は外しているが、象徴的なポーズを自然なしぐさで見せ、左手を掲げ、一目散にベンチの関塚監督の元へ走った。貴重な先制点に、激しく抱擁すると、歓喜の輪がすぐに広がった。

 5月28日に、大分の同じ小学校の1歳年上の会社員、真梨子さん(22)と結婚した。「離れているんで、毎回試合を見にくることはできないんですけど、来た時には必ずなにか料理を作ってくれる。オムライスがうまいんですよ」。普段は、大阪まで何度でも足を運んでくれる日々。2月のU-22日本代表の中東遠征から帰国すると、チーム内のポジションはなく、控え組が続いた。そこでも愛妻がいた。

 「つらい時も彼女が支えてくれた。これからは背負うべきものができたので、今まで以上に強い気持ちで頑張りたい」と、新婚イヤーの活躍に燃えていた。その気持ちがさらに得点を生んだ。37分には右CKから浜田の得点をアシスト。試合の大勢を決めた。

 結婚は、チームの一体感にも貢献した。5月の新潟合宿で“結婚披露宴”をした。「新郎新婦の入場です」と2人で手をつないで、仲間との夕食会に登場。相手は長髪のカツラをかぶり、スカートをはいたFW永井だった。ウエディングケーキとはいかず、ショートケーキにはなったが、「ケーキ入刀です」の合図に、2人でナイフを入れた。爆笑しながら、みんなの気持ちが1つになった。

 「目標の選手はいない。自分が1番だと信じてやってきた」。堂々と話す。慣れ親しんだ大分から大阪にやってきて、生活リズムの違いに慣れないこともあったが、腐らず、愛妻と一緒に努力を続けてきた。

 弘嗣の名は、弘法大師のように、大きな心で人を助け、人に迷惑を掛けない人間に育ってほしいという思いを込められて付けられた。その通りに、この日はエースFW永井が欠場し、不安視する声もあったチームを救った。

 試合後は第2戦に向けて、気持ちは切り替わっていた。「次も先制点が大事。絶対に点を取る」。2戦連続弾を宣言した。新婚ほやほやの幸せ男が、愛の力を源にチームを引っ張る。【阿部健吾】