なでしこジャパンのMF沢穂希(32=INAC)が「ゴッドマザー」役に立候補した。19日、帰国したなでしこは都内で優勝報告会見。日本代表として18年もの間、喜びや苦しみを味わってきたが、その経験を元に「母」となる。将来的には、W杯招致委員会の先導役や女子サッカー人口増のために世界中を駆け回る役割を希望した。女子サッカー界のために先頭に立って、すべてをささげる。その前にまずは、9月のロンドン五輪アジア最終予選を勝ち抜いての金メダル獲得が第1目標。沢の野望をW杯優勝が大きく加速させた。

 MF沢の野望は、すでに大きく膨らんでいる。「女子W杯の日本招致もそうですし、女子サッカー人口がもっともっと増えてほしい。少しでも日本サッカー界に役立つ仕事ができるなら率先してやりたい。各国の会長さんたちも私を知ってくれていると思うので、招致委員長でも…。今後、日本で女子のW杯が開催できる日がきたらいいなと思う」と、将来のプランを明言した。

 今大会の優勝、そしてMVPや得点王の実績は言葉の重みにも説得力が増す。米国との決勝戦後のピッチ上では09年から2年間、ワシントンで同僚だったFWワンバックと健闘をたたえ合った。「悔しいはずなのにおめでとうと言いに来てくれた。これからもいろんな面で頑張っていこう」と、日米のエース同士で将来の盛り上げも誓った。

 頭の中には女子サッカー発展のための具体的な構想がすでにある。「女の子がやれるサッカー環境が今でも少ないので広げていきたい。一番は中学生の世代」。現在、日本の男子サッカーの日本協会登録人数が約87万人なのに対し、女子は約2万5000人。男子は小学生が約29万人、中学生が約23万人とほとんど差がない。だが女子に限っては「小学生の時は男の子とやっていても、中学校の女子チームがあまりにも少ないので他の競技に流れてしまう。そこに力を入れていけばいい」。底辺拡大を願う沢の最重要改善ポイントだ。

 そのためにはドイツW杯での金メダルだけで終わってはいけないことも十分理解している。「なでしこが注目されたことはうれしい。男も女も同じW杯。優勝したのは大きいこと。でも一番大事なのは結果を出し続けること。オリンピックでも金メダルがほしい」。9月1日からは中国でロンドン五輪アジア最終予選。その先にある来年7月の本大会を「集大成」とする。

 沢は未来のなでしこたちに、あらためてメッセージを送った。「夢は見るものではなく、かなえるもの。ここまでの私の道のりは長かったんですけど、ずっと続けてきたからこそ今がある。夢に向かって頑張ってほしい」。願いは世界中に伝わる。【鎌田直秀】