日本代表FW本田圭佑(27)はそれでも「W杯優勝」に向かって突き進む。15日、2-4で大敗した国際親善試合ウルグアイ戦(14日)の開催地仙台から航空機を乗り継ぎ、所属のCSKAモスクワに合流するため成田空港からロシアに向かった。改善されない守備の不安、さらに目標設定をめぐるアルベルト・ザッケローニ監督(60)とのズレなど、代表を取り巻く状況は厳しいが、本田は一切ぶれずに進んでいく。

 これくらいの逆風で撤回するくらいなら、本田は最初から「W杯優勝」などと言っていない。ロシアに向かうため、仙台から到着した成田空港。歩きながら、2-4で大敗したウルグアイ戦後と同じようにもう1度、大量失点を招いた高いDFラインについて聞かれた。守備的に低く設定してもいいのでは?

 答えは前夜と同じだった。

 「それは違う」

 試合後に「やられたからって次は引いて守ろうかというのはナンセンス」と言った。これはひとつの信念。理由を問われ「そんなサッカー、楽しくない」と珍しく強引にまとめた。それほど譲れない思いが強い。

 ラインが高いままなら全体がコンパクトになり、攻守の素早い切り替えから攻撃にも好影響を与えられる。半面、大きく空いた裏のスペースを突かれてしまうリスクが生まれる。

 一方で低く設定すれば裏を取られる心配は減るが、相手に押し込まれて守勢を強いられカウンター頼みで攻め手の少ないサッカーになる。

 実は本田は高いか低いかの単純な2択から、何が何でも高くあるべきと、やみくもに主張しているわけではない。今の攻撃陣のタレントとコンフェデ杯で得た前線からのプレスが通用するという手応え-。それらを総合し点を取って勝つため、ザックジャパンのこれまでのやり方を貫き通そうとしている。試合後もDF陣と意見交換し「時には低くてもいい。ただ、最後の最後で絶対にやられないよう、体を張って防いでいこう」などと言っている。

 搭乗手続きの直前には、ザッケローニ監督が前夜の会見で「私はW杯優勝というリクエストを受けていない」と言ったことについても聞かれた。「どういう意味ですか?」と聞き直すと、質問をゆっくり理解しながら沈黙。そのまま返答はしなかった。

 初めから「W杯優勝」という壮大な目標について解釈とアプローチの方法に違いがあることは承知している。強要するつもりはないが、簡単に看板を下ろすはずもない。それが指揮官の発言であっても、だ。本田は、ぶれずに真っすぐ進む。【八反誠】