<国際親善試合:日本3-2ベルギー>◇19日(日本時間20日)◇ブリュッセル

 日本代表のエースMF本田圭佑(27=CSKAモスクワ)が、2戦連続ゴールでW杯優勝候補を沈めた。後半8分に代表通算20点目で初めて、利き足ではない右足で逆転弾。完全アウェーの敵地で、FIFAランク5位のベルギーに競り勝った。あえて試合2日前に「勝算はある」などと強気に語った通り、大金星を演出。ザックジャパンは強豪との2連戦を1勝1分けで終え、14年W杯ブラジル大会を見据え、復調の兆しをつかんだ。

 本田は一瞬だけ、ニヤリと笑みをこぼすかのように表情を緩めた。まだ興奮が残るスタジアム。即席テント内に設けられた取材エリアには、現地や日本のメディアが集まり、すし詰め状態になった。強敵を沈めた日本のエースの声を取ろうと、大勢の報道陣が集まる。それを横目にすると、まるで「見たか!」というように満足げな顔をして、無言のまま悠々と通り過ぎていった。

 有言実行の勝利だった。自身の得点で2-2の引き分けに持ち込んだ16日のオランダ戦の翌日。あえて「ベルギーは評価だけ高い。歴史のある国ではないし、勝算はある」と強気に語った。一部では「挑発した」などと捉えられたが、全くそんなつもりはなかった。オランダに引き分けて満足していては、目標にする「W杯優勝」は届かない。自分自身へ、そして仲間へ、重圧をかけるために、大言を吐いたのだった。

 場内は4万人を超す観衆の大合唱が響き、開始50秒過ぎには大きな爆発音が鳴った。ここは完全アウェー。心に火を付けるには、十分すぎる舞台だった。相手は5日前にコロンビアに敗れるまで1年間無敗で走り続け一躍、14年W杯の優勝候補にも挙がるベルギーだ。前半を同点で乗り切り、迎えた後半8分。遠藤からの横パスを中央でもらうと、本田は利き足の左から右に持ち替えた。DF2人の間を突き刺すかのような逆転ゴール。代表通算20得点目で初めて右足で決めた。

 日本も、本田も、まだ世界のトップを目指す成長の途中にいる。本田は8月のウルグアイ戦から7戦5発。本気で「W杯優勝」を目指す。心の叫びを、ゴールという結果で表した。

 「結果はうれしいけど、2試合とも自分たちのサッカーがやれたことが収穫。良いところもあったけど課題も残った。それを無視することはできないですし、冷静に分析しないといけない。2失点目は反省点。(でも)3失点目を許さなかった。最低限のことはできたと思います」

 試合直後、テレビのインタビューにはそう答えた。

 もがき、苦しんだザックジャパンを救った。6月にW杯出場権を獲得してからはチーム力が後退しているかのようにも映った日本を、本田が持つ独特の推進力と、反骨心でよみがえらせた。今合宿前には、モスクワで「俺を信じていたら、後悔はさせない」とまで訴えかけた。2013年最後の2連戦は、10年W杯南アフリカ大会準優勝国オランダに引き分けに持ち込み、FIFAランク5位のベルギーに競り勝った。そして希望は、いよいよ14年W杯へ続く。本田の抱く夢を、信じてみたくもなる。【益子浩一】