日本協会が、ドイツ1部シャルケDF内田篤人(26)の代表復帰に向けて動いていることが21日、判明した。W杯ブラジル大会後に代表引退を示唆した右サイドバックの招集を、ハビエル・アギーレ監督(55)が熱望。霜田正浩技術委員長(47)がこのほど極秘で渡独し本人と接触。11月の親善試合(14日ホンジュラス戦、18日オーストラリア戦)への参加を直談判したとみられる。あとは内田の気持ち次第だ。

 やはり内田の力を欲していた。欧州サッカー関係者によると、霜田氏は先週末にゲルゼンキルヘン入り。代表引退を示唆した本人を説得するため“直接出馬”して接触したという。

 霜田氏は14日のブラジル戦後、U-19アジア選手権が行われたミャンマーへ移動。17日の準々決勝を視察した。チームは北朝鮮に敗れて19日に帰国したが、霜田氏は残留。同大会の準決勝と決勝を視察していると思われていた。だが実際は極秘でドイツへ渡り、今後の代表のキーマンと会っていた。

 良いものは良い。内田の初招集に強いこだわりを見せているのがアギーレ監督だ。日本協会関係者によると「手元で見たい。どうにか呼べないか」と就任直後から要望していた。9、10月は右膝負傷の影響で招集に踏み切れなかったが、9月30日の代表発表会見で、内田の不在について質問された際、霜田氏が「監督が『発表リストにない選手の話はしない』と言っている以上、私の口から話せない。ただ、彼と連絡は取っている」と継続マークしていることを明かしていた。そして今回「特命」をドイツへ運んだ。

 内田はW杯後の7月に右の膝蓋腱(しつがいけん)炎を発症。約2カ月の長期離脱を乗り越え、9月23日ブレーメン戦で復帰した。18日の最新節ヘルタ戦から、シャルケの監督がケラー氏からディマテオ氏(元チェルシー監督)に代わったが、内田への評価は変わらず先発フル出場している。誰が監督でも使いたくなる実力を、アギーレ監督も同じように高く評価している。

 内田はそのヘルタ戦で勝利に貢献し、20日付の独キッカー誌で今季初めてベストイレブンに選出された。コンディションの不安は解消されたが、招集への壁が内田の胸の中にある。ブラジルW杯後、今後の代表活動について「(引退を)考えてます。ちょっと前から、ずっと考えていたこと。人には言ってなかったけど」と打ち明けた。アギーレジャパンの初陣までに代表引退か、代表復帰かを決断するとみられていたが、くしくも負傷でその結論は先送りされていた。

 来年1月のアジア杯オーストラリア大会は、是が非でも最強メンバーで連覇を狙いたい。アギーレ監督が「11月の2試合でアジア杯に参加する23人が決まります」と明言したように、選考までに残されたのは2試合だけだ。内田の穴を埋めるのは、内田しかいない。この日帰国した霜田氏の口から朗報が出るか注目される。<W杯後の内田>

 ▼6月25日

 W杯ブラジル大会の1次リーグ第3戦でコロンビアに1-4で完敗。試合後「ずっと考えていた」と代表引退を示唆。

 ▼7月17日

 シャルケの練習中に右の膝蓋腱(しつがいけん)炎を発症。前日16日に、W杯後の休暇を終えて合流したばかり。全治2~3週間の診断だった。

 ▼9月4日

 ハイガー選抜との練習試合で実戦復帰し、前半の45分間に出場。W杯後、初の実戦。

 ▼23日

 ブレーメン戦で1部リーグ復帰。今季初出場をフル出場で飾り、チームの今季初勝利に貢献。

 ▼27日

 ドルトムントとのダービー戦を制し、29日付の独ビルト紙から今節のベストイレブンに選出された。前節に続いて2度目。

 ▼10月10日

 イタリアのコリエレ・デロ・スポルト紙が「ACミランが内田獲得に動いている」と報じた。

 ◆日本代表の右サイドバック争い

 9月のアギーレジャパン発足後、酒井宏樹(ハノーバー)と酒井高徳(シュツットガルト)が計4試合で試されたが、結果を残せなかった。酒井宏に対しては、ほかの外れた選手とともに「いっそう努力して戻ってきてほしい」と指揮官から“ダメ出し”された。9月はU-21日本代表候補でもある松原(新潟)が、10月は西(鹿島)が呼ばれたが、ともに出場せず。決め手がない状況だ。